特殊車両の中古車の購入について詳しく解説

コラム

特殊車両は新車価格が高額なために、中古車も多く取引されています。特殊車両は中古での購入はできますが、購入後の特殊車両通行許可の可否、構造変更履歴、車検証記載情報の正確性などの確認すべき項目が多いために、慎重に選ぶ必要があります。

特殊車両は中古での購入もできますが、特殊車両ならではの注意点が多く、購入前の「車両諸元確認」や「構造変更の履歴確認」ができないと購入後に通行許可が取れないといったトラブルになることがありますので注意が必要です。

特殊車両とは

特殊車両とは、道路法・道路運送車両法などで規定される「一般的な道路構造ではそのまま通行できない規格の車両」の総称です。

具体的には、車体の幅・高さ・長さ、あるいは車両総重量や軸重が通常の制限を超える車両を指します。特に、車幅2.5m以上、車高3.8m以上、車長12m超(トレーラは18m超)、総重量20t超といった基準を満たす車両が該当します。

国土交通省の資料からの引用「道路法に定める一般的制限値について」

これらの基準を超える車両には、低床トレーラや重量物運搬用トレーラ、長尺物輸送トレーラ、特殊架装された建設業用トラックなどがあります。建設現場での大型建機の輸送や、工場設備の重量物運搬、高層ビル建設時の長尺物輸送などで欠かせない存在です。

国土交通省の資料からの引用です。「代表的な特殊車両」

特殊車両は新車価格が高額なために、中古車も多く取引されています。特殊車両は中古での購入はできますが、購入後の通行許可の可否、構造変更履歴、車検証記載情報の正確性などの確認すべき項目が多いため、慎重に選ぶ必要があります。

具体的な特殊車両

特殊車両には具体例にどのようなものがあるかを説明します。

建設分野

建設工事、インフラ整備、高所作業で使います。

クレーン車(ラフター、トラック)、高所作業車、穴掘建柱車、ミキサー車、ポンプ車
などがあります。

運搬・輸送分野

重量物・長尺物・特定貨物(液体、ガスなど)の輸送に使う特殊車両です。

トレーラー(バン型、タンク型、ポール型)、海上コンテナ用トレーラー、キャリアカーなどがあります。

環境・清掃分野

廃棄物収集、道路・施設清掃、環境整備用につかう車両です。

塵芥車(パッカー車)、散水車、バキュームカー(汚泥吸引車)、清掃車などがあります。

その他の分野

特定の機能(温度管理、介護支援など)を付加した車両です。

たとえば、冷蔵冷凍車、福祉車両、特種用途自動車などです。

特殊車両の購入方法

特殊車両の購入方法は複数ありますが、それぞれメリットとデメリットがあります。

特殊車両専門の中古販売業者から購入する方法

特殊車両を専門に扱う業者は、低床トレーラ、重機運搬車、ポールトレーラ、ステアリング付きトレーラなどを多数扱っており、車両の特性に関する知識が豊富です。

専門店の強みは、車両の諸元データ(実測値)を把握していることと、通行許可申請のポイントを熟知していることです。通行許可は車両諸元が不明だと申請すらできないため、専門店での購入は安全性が高いといえます。

オークション・オンライン販売で購入する方法

ネットオークションや業者間オークションでも多くの特殊車両が出品されています。

価格は安いですが、車両寸法が実測と合わない、架装物の改造履歴が不明、通行許可が取れない車両の可能性といった問題点があります。

特に中古市場では実測の幅が車検証に記載されている寸法より広いなどのケースが多く、購入してから発覚するトラブルが少なくありません。

建設会社・運送会社から直接譲渡

直接的な会社間取引による売買は、実際に使われていた車両の履歴が分かるため安心感があります。整備記録、修理履歴、道路状況に合わせた架装内容、荷物の種類など、現場でしか得られない情報が手に入る場合があります。ただし、諸元表がない場合には再取得が難しいこともあるため、確認が必要です。

中古特殊車両を購入するメリット

費用の削減

中古であれば、費用は当然安くなります。特殊車両は一般車両に比べてかなり高価です。中古車であれば、新車価格より安いケースが多く、初期投資を大幅に抑えられます。新規事業立ち上げや、一時的な車両増強を検討している企業にとって魅力です。

納期の短縮

新車の場合、特殊な架装などに時間がかかって、数ヶ月から1年以上の納期がかかることもありますが、中古車はすでに完成した状態で販売されているため、名義変更や整備が完了次第、すぐに現場で使えるので即戦力となります。

希少な車両の入手

中古市場には、すでに生産が終了したものの、機能や耐久性から人気のある希少なモデルや、自社の業務にぴったり合う特殊な架装が施された車両が出回ることがあります。新車ではオーダーメイドが必要な仕様も、中古車なら既存の在庫から見つけられる可能性があります。

特殊車両の購入手続き

中古の特殊車両を購入する際は、一般車以上に多くの確認項目があります。

車検の状況を確認

特殊車両であっても、車検は普通の貨物車と同じ制度が適用されますが、過去に架装や改造が行われている場合、構造変更の届出が適切に行われていないケースがあります。特に、車幅や車高の増加、ウインチや台枠の変更などは構造変更の対象となるため、車検証に反映されていないと今後の車検や許可申請で問題が出る可能性があるので注意が必要です。

必要書類の確認

  • 特殊車両の通行許可には詳細なデータが必要です。購入前に以下の資料の有無を確認します。
    • 車検証(寸法・重量情報の正確性含む)
    • 架装メーカーの諸元表(仕様書)
    • 改造申請・構造変更記録
    • 車体番号や型式の整合性
    • トレーラの場合はキングピン荷重・軸距のデータ

特に諸元表は、持っているかどうかで通行許可取得の難易度が大きく変わります。

特殊車両通行許可の再取得

中古車の場合、前所有者の通行許可は引き継げません。

特殊車両通行許可は車両の寸法・重量、運搬する荷物、通行する経路、申請者がセットになっているため、所有者が変わると必ず再申請が必要になりますので、車両購入後に、すぐに使用できるとは限らない点にも注意が必要です。

特殊車両通行許可は必ず必要です。法令の引用を掲載しておきます。

「道路法第47条の2からの引用」

第四十七条

道路の構造を保全し、又は交通の危険を防止するため、道路との関係において必要とされる車両(人が乗車し、又は貨物が積載されている場合にあつてはその状態におけるものをいい、他の車両を牽けん引している場合にあつては当該牽けん引されている車両を含む。第四十七条の五第三号及び第四十七条の六第一項第一号を除き、以下この節及び第八章において同じ。)の幅、重量、高さ、長さ及び最小回転半径の最高限度は、政令で定める。

2 車両でその幅、重量、高さ、長さ又は最小回転半径が前項の政令で定める最高限度をこえるものは、道路を通行させてはならない。

特殊車両の税金

特殊車両の税金は一般のトラックとほぼ同じ制度ですが、車両総重量が大きいケースが多いために、税負担が高めになる傾向があります。

自動車税(種別割)

自動車税は車両総重量および用途(自家用・事業用)により決まります。総重量が大きい特殊車両は、通常より高い税額が課されることがあります。

自動車重量税

重量税は車検の際に支払う税金で、重い車両ほど高くなります。特殊車両は架装物が重くなる傾向があるため、一般の貨物車より負担が大きくなることがあります。

*なお、令和7年(2025年)5月1日以降、自動車重量税はこれまでの「車両重量」中心の課税から、 車両の燃費性能も加味した新しい体系に切り替わりました。 燃費基準をクリアしていない一部の車種では、従来より税額が高くなるケースも想定されるため、あらためて車の燃費区分をご確認ください。

消費税

中古車であっても業者から購入する場合は消費税が課税されます。個人間取引の場合は非課税ですが、事業用としては整備保証がないために、あまり一般的ではありません。

環境性能割

特殊用途車は環境性能基準を満たしにくいことがありますので、減免対象外となる場合があります。自治体によって扱いが異なるため、事前確認が必要です。

特殊車両の販売店

特殊車両を扱う販売店は次のように分類できます。

特殊車両専門の中古販売店

低床トレーラ、ポールトレーラ、油圧機器付き架装車などを専門に扱う店舗で、車両諸元の情報を細かく管理している場合が多いです。

また、購入後の通行許可申請に必要な資料を提供してくれるなど、サポート体制も充実していることが多く、最もおすすめできる購入先です。

トラック専門中古店

ダンプ、クレーン付トラック、平ボディなど幅広い車両を扱う店舗で、在庫数が多いのが特徴です。

ただし、特殊車両に特化していない場合、特殊車両通行許可に必要な寸法データの把握が不十分なこともあるため注意が必要です。

メーカー系列の販売店

日野、いすゞ、三菱ふそうなどのメーカー系ディーラーでは、下取りとして入った特殊用途車を中古として販売するケースがあります。純正架装比率が高く状態が良い車両も多いですが、在庫数が少ないのが難点です。

中古特殊車両のデメリットと注意点

たしかにメリットは大きいですが、中古特殊車両ならではのリスクとデメリットもありますので注意が必要です。

車両状態

予期せぬ意外な修理費用がかかったり、車両状態の把握が難しい場合があります。前のオーナーの使用状況やメンテナンス履歴がよくわからない場合、購入後に予期せぬ故障や高額な修理費用が発生するリスクがあります。手作りなどが多い特殊な架装部分は専門的な知識が必要なため、一般的な中古車以上に念入りな点検が必要です。

保証期間と車検期間の短縮

中古車であるために、メーカー保証が残っていない、または残っていても期間が短いことがほとんどですし、すでに登録されているため、最初の車検期間(一般的に新車より短い)が短縮されます。

最新の排出ガス規制や技術への非対応

年式の古い中古車の場合は、現在の地域や業界で求められる最新の排出ガス規制、たとえば、PM/NOx法などに対応していない可能性がありますし、最新の安全装備や燃費性能に優れた技術が搭載されていないため、ランニングコストや運用範囲に制約が出ることも考えられます。

Q&A

まとめをかねて、Q&Aをつくりました。参考にしてください。