大型EV・FCVの特殊車両通行許可|重量制限と制度見直しの背景

コラム

大型EV(電気自動車)やFCV(燃料電池自動車)の導入にあたり、「車両が重くなると特殊車両通行許可が必要になるのか」「重量制限の緩和はどうなっているのか」と気になる事業者様もいらっしゃるのではないでしょうか。

大型の電動トラックやバスは、バッテリーや水素タンクなどを搭載するため、従来のディーゼル車に比べて車両重量が増加する傾向にあります。重量の制限に合わせて積載量を減らすと、輸送効率に影響するため、電動化と積載量の確保をどのように両立するかが課題となっています。

この記事では、大型EV・FCVと特殊車両通行許可(特車許可)の関係、重量制限の緩和が検討される背景、関連する制度の見直しについて解説します。導入や運行を検討する際は、制度の検討状況と実施済みの内容を区別し、使用する車両や通行経路に応じて確認することが大切です。

大型EV・FCVと特殊車両通行許可の関係

特殊車両通行許可とは、道路法および車両制限令に基づき、車両の大きさや重さの制限(一般的制限値)を超える車両を通行させる際に、道路管理者から受ける許可です。道路の構造を保全し、交通の危険を防止するため、通行経路や必要な通行条件を定めて許可されます。

一般的制限値を超える大型トレーラー、重機運搬車、重量物運搬車などは、原則としてそのまま道路を通行することはできません。大型EV・FCVも、電動車であることだけで許可が不要になるわけではなく、車両の寸法・重量や通行する道路に応じた確認が必要です。

一般的制限値は、主に次のとおりです。寸法や重量は、乗員や積載物を含めた状態で確認します。

  • 幅:2.5m
  • 長さ:12m
  • 高さ:3.8m(高さ指定道路では4.1m)
  • 総重量:20t(重さ指定道路などでは、車両の長さや軸距などに応じて最大25t)
  • 軸重:10t
  • 輪荷重:5t
  • 最小回転半径:12m

このほか、隣接する車軸にかかる重量にも制限があります。総重量が基準内であっても、軸重などが制限を超える場合があるため、車両全体の重量だけで判断しないことが大切です。

特車申請では、車両・積載物・重量・通行予定経路などを確認します。許可を受けた後は、許可された経路や、徐行・誘導車の配置などの通行条件に従って運行する必要があります。許可の有効期間は、申請内容や車両の条件などによって異なります。

なお、条件を満たす車両・経路では、特殊車両通行許可制度とは別に「特殊車両通行確認制度」を利用できる場合もあります。

以下は、国土交通省の資料に掲載されている一般的制限値の図です。

電動車の重量制限緩和が検討される背景

大型の電動トラックやバスは、大容量バッテリー(EVの場合)や水素タンク・燃料電池(FCVの場合)を搭載するため、従来のディーゼル車に比べて車両重量が増加する傾向にあります。

FCVとは、Fuel Cell Vehicle(燃料電池自動車)の略です。水素と酸素の化学反応によって発電し、その電気でモーターを動かして走行します。走行時に二酸化炭素を排出せず、水素ステーションで燃料を補給する点が特徴です。

車両重量が増えると、同じ量の荷物を積んだ場合でも、車両総重量や軸重などが道路の制限値を超える可能性があります。その場合には、特殊車両通行許可などの手続きや、通行経路・通行条件の確認が必要となり、運行上の制約や事務負担が生じます。

一方、重量の制限に収めるために積載量を減らすと、同じ量の荷物を運ぶための運行回数が増える可能性があります。物流の「2024年問題」やドライバー不足も踏まえると、電動化を進めながら積載量と輸送効率を確保することが課題です。

こうした背景から、電動車の重量増加を考慮した制度の見直しが論点となっています。ただし、道路や橋梁の構造保全、交通の安全も確保する必要があるため、緩和の対象となる車両や道路、適用条件を確認することが重要です。

海外でも電動車の重量増加への対応を議論

欧州でも、電動トラックなどの普及に向けて、バッテリーや燃料電池などを搭載するために必要な重量・スペースを考慮した制度の見直しが議論されています。2024年3月12日に欧州議会が採択した立場では、ゼロエミッショントラックの重量上限を引き上げ、電動化に伴う重量増加への対応と積載量の確保を図る案が示されました。

これは海外の制度見直しの事例であり、日本の特殊車両通行許可にそのまま適用されるものではありません。国内で運行する際は、日本の制度と通行予定経路の条件に基づいて判断する必要があります。

電動車にも関係する通行制度・車検の見直し

大型EV・FCVの運行を検討する際は、電動車の重量制限に関する議論に加えて、特殊車両全般の通行制度や車検制度の変更も確認しておくとよいでしょう。以下は、電動車だけを対象とした重量制限の緩和とは異なる制度の見直しです。

夜間通行時間帯の緩和試行

2024年4月から、特殊車両の夜間通行時間帯について、従来の21時~翌6時を20時~翌7時に拡大する緩和試行が行われています。ただし、すべての道路や車両に適用されるわけではありません。道路管理者が道路構造の保全や交通安全上の支障がないと認めた対象道路など、所定の条件を満たす必要があります。

運行時は、緩和の情報だけで通行時間を判断せず、許可証や通行確認の回答書に記載された条件を確認してください。

特殊車両通行確認制度によるオンラインでの経路確認

2022年4月から、あらかじめ登録した車両について、道路情報が電子化された道路を対象に、オンラインで通行可能な経路を即時に確認できる「特殊車両通行確認制度」が運用されています。

車両や経路が利用条件を満たす場合には、従来の特殊車両通行許可申請に代えて利用できます。ただし、大型EV・FCVであれば必ず利用できるということではなく、登録できる車両か、予定する経路が対象となるかを確認する必要があります。

車検を受けられる期間の拡大

2025年4月1日から、車検の残存有効期間を失わずに継続検査を受けられる期間が、有効期間満了日の「1か月前」から「2か月前」に拡大されました。整備や車検の日程を組みやすくする変更ですが、特殊車両通行許可の要否や重量制限を変更するものではありません。

商用車の電動化支援と特車許可の違い

大型EV・FCVの普及に向けて、車両や充電設備の導入を支援する事業も行われています。環境省は、国土交通省・経済産業省と連携し、「商用車等の電動化促進事業」により、電動トラック・バス・タクシーなどの導入を支援しています。

補助対象となる車両・設備、申請条件、公募期間などは、年度や事業区分によって異なります。導入を検討する際は、環境省「商用車等の電動化促進事業」や、各事業の執行団体が公表する最新の公募要領をご確認ください。

ただし、導入費用への補助と、道路を通行するための特殊車両通行許可は別の制度です。補助対象の車両であっても、道路の寸法・重量の制限を超える場合には、特殊車両通行許可や通行確認制度の利用について確認する必要があります。

電動トラックを導入する際は、購入費用や充電設備だけでなく、予定する積載量での車両総重量・軸重、運行経路、必要な手続きも併せて確認しておくことが大切です。

大型EV・FCVの特殊車両通行許可に関するよくある質問

Q
大型EV・FCVを導入すると、必ず特殊車両通行許可が必要ですか?
A

必ず必要になるわけではありません。乗員や積載物を含めた車両の寸法・重量と、通行する道路の制限によって判断します。ディーゼル車から電動車へ入れ替える場合も、従来の車両と同じ扱いになるとは限らないため、改めて確認が必要です。

Q
重量制限の緩和を見込んで、車両の購入や運行計画を進めてもよいですか?
A

検討中の見直しを、実施済みの制度として扱うことは避けましょう。購入前に、予定する積載量での総重量・軸重や運行経路を確認し、適用できる制度と必要な手続きを整理しておくことが大切です。

Q
車検証の車両総重量だけで、特車許可が必要か判断できますか?
A

車検証は重要な確認資料ですが、それだけで判断できるとは限りません。実際の積載状態での寸法・重量、各車軸にかかる重量、通行経路の道路条件なども確認します。必要に応じて、車両メーカーの諸元資料などを用意しましょう。

Q
ディーゼル車で取得した特車許可は、入れ替えた電動トラックにも使えますか?
A

車両を入れ替えた場合に、以前の許可をそのまま使えるとは限りません。許可対象の車両や諸元が変わるため、変更申請や新規申請など、必要な手続きを確認してください。新しい車両で運行を始める前に、許可内容との照合が必要です。

Q
大型EV・FCVの特車申請を行政書士へ相談する際は、何を用意すればよいですか?
A

車検証や自動車検査証記録事項、車両の寸法・重量・軸重が分かる諸元資料、積載予定の貨物、出発地・目的地・希望経路などをご用意いただくと、確認が進めやすくなります。購入前で車検証がない場合は、メーカーの仕様書など、分かる範囲の資料を添えてご相談ください。

まとめ|大型EV・FCVは導入前に重量と通行経路を確認

大型EV・FCVは、バッテリーや水素タンクなどの搭載により、従来のディーゼル車に比べて車両重量が増加する傾向にあります。電動化と積載量の確保を両立するため、重量制限の見直しが論点となっていますが、検討中の内容と実施済みの制度を区別することが大切です。

また、電動車の導入補助や車検制度の変更は、特殊車両通行許可の要否とは別の話です。大型EV・FCVであっても、積載状態での寸法・総重量・軸重などが道路の制限を超える場合には、必要な通行手続きを確認しなければなりません。

車両の導入や入れ替えを検討する際は、予定する積載量と運行経路を整理し、特殊車両通行許可や通行確認制度を利用できるか、どのような通行条件になるかを事前に確認しておきましょう。

大型EV・FCVの特殊車両通行許可申請は行政書士へご相談ください

行政書士法人アラインパートナーズは、特殊車両通行許可申請を専門に扱う行政書士事務所です。代表行政書士の八木辰男が、ご相談から申請まで一貫して対応いたします。オンラインでの手続きに対応しているため、全国の事業者様からご依頼いただけます。

「導入予定の電動トラックに特車申請が必要か分からない」「車両の入れ替えに伴う手続きを確認したい」「予定する経路で申請できるか相談したい」という場合は、お気軽にご相談ください。

車両の寸法・重量や通行予定経路を確認し、特殊車両通行許可の申請代行を行っています。車検証やメーカーの諸元資料、積載予定の貨物、出発地・目的地など、分かる範囲の情報をお知らせください。

申請代行の費用は報酬・料金のご案内をご覧ください。申請の要否や手続きについてのご相談は、お問い合わせフォームから承っております。

参考資料

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