全日本トラック協会は2025年(令和7年)12月24日に、国土交通省へ特殊車両通行制度に関する要望を行っています。
次のPDFは公益社団法人全日本トラック協会(JTA)の重要物流道路の指定に関する国土交通省道路局への要望ですが、この要望の要約と要望の背景、現状の制度の問題点、今後などについて詳しく解説します。特殊車両とかかわりの深い制度でもあります。
https://jta.or.jp/wp-content/uploads/2026/01/yobo202601.pdf
公益社団法人全日本トラック協会(全ト協)は、全国約6万3,000社のトラック運送事業者を代表する中央団体です。運送事業の適正運営、公正な競争、健全な発展、そして社会的・経済的地位の向上を目的とし、交通安全対策や環境保全、労働環境の改善に取り組んでいます。
重要物流道路とは
重要物流道路制度は、2018年の道路法改正に基づいて、国土交通大臣が指定した物流上重要な道路(約3万5,000km以上)の機能強化と重点支援を行う仕組みのことです。大型トレーラーの走行を許可制から特例へ変更して、災害時の道路復旧を国が代行するなど、平常時・災害時を問わない安定した物流輸送網を確保することを目的としています。
なお、平成30年3月に「重要物流道路制度」が創設されて、重要物流道路に係る特別の構造基準が規定されたことによって、国際海上コンテナを運搬するセミトレーラ連結車が特別の許可なく道路を通行することができる環境が整いつつあり、道路管理者が道路構造等の観点から支障がないと認めて指定した区間に限定して、道路を通行する車両の制限値を引き上げることにより、一定の要件を満たす国際海上コンテナ車(40ft背高)の特殊車両通行許可を不要としています。
セミトレーラ連結車とは、エンジンと運転席を持つ「トラクター(ヘッド)」が、前輪がなく後輪のみを持つ「セミトレーラー(荷台)」を牽引する車両です。最大の特徴は、トレーラーの前部をトラクターの連結装置(カプラ)に載せ、荷物の重量の一部をトラクター側で支える構造であることです。

要望書の主旨(要約)
この要望書は、トラック運送事業が地域の生活・経済を支える「公共的物流サービス」であるとの認識に立って、物流の安定的な輸送基盤を確保するため、国土交通大臣が指定する「重要物流道路」の追加指定・整備を強く求めるものです。
「重要物流道路の指定に関する要望書」からの引用です。
「重要物流道路 指定要望 区間一覧」に記載した道路について、重要物流道路に指定していただきたい。
重要物流道路に指定された区間の道路整備に集中投資し、早期完成・供用させることにより、大型トラックがスムーズに走行できる環境を早期に実現していただきたい。
主な要点は次の通りです。
重要物流道路の追加指定を求めること
栃木、群馬、石川、静岡、福岡の複数区間(計18区間)を「重要物流道路」に指定してほしい。栃木、群馬、石川、静岡、福岡の5県にまたがる未供用(事業中)の5区間および、すでに開通している(供用中)13区間の追加指定を求めています。
指定された区間の道路整備に集中的に投資し、早期完成・供用を図ること
大型トラックがスムーズに走行できるよう早期の道路整備促進も求めています。指定区間への集中投資による早期完成・供用を実現し、大型トラックがスムーズに走行できる環境を構築することです。

要望の背景
重要物流道路制度の制度的背景
「重要物流道路」は、道路法の一部改正(2018年3月)によって創設された制度です。これは、物流の安定的な輸送を確保するために、物流上重要な道路網を国が指定して、機能強化・重点支援する仕組みのことです。
指定されると、物流の要となる道路構造基準が設定されて、国際海上コンテナ車(40ft背高)の特殊車両通行許可が不要となる区間が設定されることもあり、輸送効率化に寄与します。
この制度は、平常時の物流効率化だけでなく、災害時の道路啓開・復旧の迅速化にも資するものとして位置付けられています。
また、ドライバーの労働時間短縮にも貢献します。物流業界では現在、ドライバーの労働時間短縮が急務となっています。迅速かつ確実な配送を維持するためには、渋滞の少ない効率的な道路網が不可欠です。
さらに「2024年問題」への危機感もあります。目的地に「短時間で確実に到着できる」環境を整えなければ、物流サービスの維持が困難になるという危機感が背景にあります。
物流業界の構造的課題
日本の物流は多くをトラック輸送が担っており、貨物輸送量の約90%を占めていますが、ドライバー不足や労働時間規制強化や低い輸送効率など、構造的な課題を抱えています。こうした課題は、物流ネットワークの効率化と制度的支援を強化する必要性を高めています。
現行制度の問題点と課題
指定区間の不足
現在の重要物流道路は供用中の区間が多いものの、都市間・地域間をつなぐ物流ネットワークとしてはまだ十分ではありません。PDFの要望区間を見ると、高速道路や主要国道だけでなく、一般国道・都市間連絡路まで含めた指定を求めています。
すでに指定は進んでいますが、依然として物流ニーズに対応しきれていない「ミッシングリンク(未整備区間)」が存在します。
休憩施設の不足
要望書では「ドライバーが適切に休憩できるよう」に求めており、走行のしやすさだけでなく、法定休憩を遵守できる環境整備が追いついていない現状が伺えます。
道路の機能強化の遅れ
重要物流道路として指定されても、実際の道路整備(拡幅・構造改良・休憩施設整備など)が遅れている区間が存在します。指定自体は物流効率化に役立ちますが、現実の道路網の整備とセットで進めないと効果が限定されます。
国際競争力への対応
重要物流道路に指定されると「国際海上コンテナ車」の特車許可が不要になるなどのメリットがありますが、指定が遅れている区間ではこうした規制緩和の恩恵を十分に受けられません。
制度の活用範囲の限定
重要物流道路に指定されても、特殊車両通行許可不要区間にできるのは一定の条件を満たす区間のみであり、すべての道路で同等の取り扱いが即座に適用されるわけではありません。これが運用面での柔軟性欠如につながるとの指摘もあります。
今後の展望
指定区間の拡大と優先的整備
全ト協の要望どおり、トラック運送事業者の実需に基づいた区間の追加指定がすすめば、物流ネットワークとしての「重要物流道路」はさらに強化・拡大します。これによって、
大型・国際コンテナ車両の走行効率向上、災害時の物流確保(道路啓開の優先措置など)、地域間輸送の安定化と産業物流の強化が期待されます。
法制度としては、政府の「物流政策大綱」や道路整備計画と連動させることで指定道路ネットワークの整合性を高めていくことが重要です。
物流DX・道路管理の効率化措置との連携
重要物流道路制度は、道路情報の電子化や特殊車両通行許可システムのデジタル化と組み合わせて使うことで、物流の効率を一層高められる可能性があります。すでに全ト協はこうした制度改善の要望も併せて提起しています。
地域連携による指定要望活動の強化
PDF要望書を見ても、複数の地方で要望区間が提出されており、地方自治体・運送業界・国が連携した指定推進の取り組みが今後の制度活用の鍵となります。


