特殊車両通行許可の取り締まり・罰則:指導取締基地・重量自動計測装置の監視とは

コラム

国土交通省は、重量超過車両による道路損傷や重大事故の多発を受け、指導取締基地と車両重量自動計測装置を組み合わせた取り締まり体制を強化しています。

違反が発覚した場合、運転者個人だけでなく事業者(法人)にも最大100万円の罰金が科せられるほか、通行許可の取り消しや事業者名の公表といった厳しい行政処分もあります。

国土交通省の公式資料や大阪府などの自治体情報、全日本トラック協会の案内をもとに、特殊車両通行許可の取り締まり体制・違反時の罰則・許可取り消し基準を詳しく解説します。

特殊車両通行許可制度の基本を押さえる

特殊車両とは

道路は、一定の規格(一般的制限値)の車両が安全・円滑に通行できるよう設計されています。この制限値を超える車両は「特殊車両」と呼ばれ、原則として道路を通行することはできません

  • 車両制限令が定める一般的制限値の主なものは次のとおりです。
    • 総重量:20トン(重さ指定道路は25トンまたは最大27トン)
    • 軸重:10トン
    • 幅:2.5メートル
    • 高さ:3.8メートル(高さ指定道路は4.1メートル)
    • 長さ:12メートル

これらを超える車両で道路を走行する場合は、道路管理者(国道事務所・都道府県・市区町村)に申請し、特殊車両通行許可証の交付を受けることが義務づけられています。

令和4年4月開始の「特殊車両通行確認制度」

令和4年4月からは、従来の「特殊車両通行許可制度」に加えて、特殊車両通行確認制が運用を開始しました。あらかじめ車両を登録しておけば、出発地・目的地を入力するだけでオンライン即時に通行可能経路を確認できる、より利便性の高い制度です。ただし、ETC2.0車載器の搭載が条件となります。

重量超過車両の走行実態と取り締まり強化の背景

国土交通省の調査によると、総重量20トン以上の重量超過車両の走行実態は深刻な状況です。法令を遵守して走行しているのは全体の約36%にとどまり、約64%が何らかの違反状態で走行しているというデータが示されています。

  • データの内訳は次のとおりです。
    • 法令遵守:36%
    • 総重量超過(車両制限令違反かつ過積載):35%
    • 許可重量超過:14%
    • 無許可走行:15%

重量超過車両の通行は、橋梁や舗装への疲労蓄積という重大な問題を引き起こします。車両の重量が道路構造物の疲労に及ぼす影響は、舗装では重量の4乗、RC床版では12乗に比例するとされています。たとえば軸重10トンの基準に対して2トン超過(12トン)した場合、舗装には約2台分、RC床版には約9台分もの疲労が蓄積されます。

さらに、重量超過車両による事故は死亡事故などの重大事故に直結しやすく、散乱した積荷の撤去作業のために長時間の通行規制が必要になるなど、社会経済活動への影響も甚大です。

指導取締基地と車両重量自動計測装置

国土交通省は、違反車両の取り締まり体制を強化するため、指導取締基地と車両重量自動計測装置を組み合わせた二段構えの監視体制を整備しています。

指導取締基地とは

指導取締基地とは、道路脇に設置された取り締まり専用の施設です。違反が疑われる車両を引き込み、重量・寸法を計測します。計測の結果、法令違反が確認された場合には以下の措置が行われます。

貨物の分割・軽減などの措置命令(総重量・寸法の軽減)
指導警告の実施
特殊車両通行許可を受けるまでの停車命令
高速道路の場合:指定したインターチェンジからの退出命令
許可条件を満たした通行の命令(通行時間帯・誘導車配置の遵守)

ただし、指導取締基地にはスペースの問題などから引き込める車両数に限界があるため、すべての違反車両を捕捉することが困難な状況でした。この限界を補完するために登場したのが、車両重量自動計測装置です。

車両重量自動計測装置とは

車両重量自動計測装置は、走行中の状態において、基準を超える車両の重量などを自動的に計測するシステムです。路面下や路上に設置されたセンサーが走行車両の重量データをリアルタイムで取得し、特殊車両通行許可のデータベースとオンラインで照合することで、許可の有無や許可条件との整合性を自動判定します。

国土交通省は平成20年(2008年)10月1日より、この車両重量自動計測装置の本格運用を開始しました。装置により24時間365日、連続的に違反車両の通行実態データを把握することが可能となり、従来の指導取締基地だけでは困難だった常習的違反者の特定・追跡が実現しました。

二つのシステムの連携による取り締まり強化

指導取締基地と車両重量自動計測装置の連携により、取り締まりの流れは以下のように強化されています。

  1. 車両重量自動計測装置が走行データを連続収集し、データベースと照合
  2. 繰り返し違反走行が確認された事業者に指導警告書を送付
  3. 指導警告後も違反を繰り返す事業者は呼び出しの上、厳重注意
  4. それでも改善されない場合は事業者名の公表・通行許可の取り消し・警察への告発へ

自治体も国の取り締まり強化通知を踏まえ、移動式トラックスケールを活用するなど独自の取り締まり強化を実施しており、取り締まりの実施状況を公表しています。

4. 違反時に科される罰則の詳細

特殊車両通行許可に関する違反には、道路法に基づく厳しい罰則が定められています。重要なのは、違反した運転者だけでなく、事業主体である法人や事業主にも同様の罰金が科される「両罰規定」(道路法第107条)が適用される点です。

主な罰則一覧

違反内容罰則根拠条文
通行禁止・制限区間への違反通行、許可条件違反6か月以下の懲役または30万円以下の罰金道路法第103条第4項
無許可で制限超過車両を通行させた者、許可条件に違反して通行させた者100万円以下の罰金道路法第104条第1項
通行中に許可証を車両に備え付けていなかった者100万円以下の罰金道路法第104条第2項
道路管理者の措置命令(通行の中止・総重量の軽減・徐行など)に違反した者50万円以下の罰金道路法第105条
法人の代表・代理人・使用人等が違反行為をした場合の法人への罰金行為者と同様の罰金(両罰規定)道路法第107条

罰則は、主に道路管理者から警察へ「告発」された場合に適用されます。悪質な違反や常習的な違反者は告発の対象となるため、軽視できません。

特殊車両通行許可の取り消し基準

国土交通省は、事業者の法令遵守意識をより一層徹底するため、特殊車両の通行に関する指導取締要領(道路局長通達)を改正し、許可取り消し基準を拡充しています。

従来からの取り消し基準

道路管理者が付した条件に違反して特殊車両を通行させ、死亡または重傷に係る交通事故、あるいは道路の損壊に係る重大な交通事故を発生させたとき

道路管理者の命令に違反して特殊車両を通行させたとき

改正で追加された取り消し基準

情報元:国土交通省「特殊車両の通行に関する指導取締りの強化について」
平成20年(2008年)10月1日

制度改正で新たに追加された次の取り消し基準が、現場の事業者に特に注意が必要な点です。

・許可に係る通行経路において許可内容を超えた重量または寸法の特殊車両を通行させ、重大な交通事故を発生させた場合

・許可経路において許可内容を超えた重量等の車両を通行させている者が、道路管理者の命令に違反した場合

・常習として、許可された通行経路において許可内容を超えた重量等の特殊車両を通行させた場合

特に注目すべきは「常習として」という要件の追加です。これにより、たとえ重大事故が発生していなくても、車両重量自動計測装置のデータで繰り返し違反が記録されると、許可の取り消し対象となり得ます。

違反が発覚した場合の行政処分の流れ

取り締まりで違反が発覚した場合、段階的な行政処分が行われます。

1.措置命令(その場での行政処分)

指導取締基地や高速道路の料金所での取り締まりで、違反が確認された場合は即時に措置命令が出されます。貨物の分割・軽減、通行の停止、高速道路からの退出などが命じられます。

2.指導警告書の送付

車両重量自動計測装置のデータにより、繰り返し違反走行が確認された事業者には、文書で指導警告書が送付されます。

3.呼び出しによる厳重注意

指導警告後も改善されない事業者は、国道事務所等に呼び出され、対面での是正指導を受けます。

4.事業者名の公表・通行許可の取り消し・告発

それでも違反が継続する悪質・常習事業者に対しては、社会的制裁として事業者名が公表されるとともに、通行許可が取り消され、さらに警察への告発が行われます。

法令遵守対策

取り締まりの強化と罰則の厳格化を踏まえて、事業者が対策を整理します。

許可証の正確な取得と車両への備え付け

通行する経路・車両・日時を正確に申請して、許可証および付属書類を必ず車両に備え付けます。許可証不携帯だけで100万円以下の罰金対象となります。

積載重量の厳格な管理

出発前に必ず積載重量を確認し、許可された総重量・軸重を超えないよう管理します。過積載の状態では特殊車両通行許可を受けることができません。

許可経路の厳守

許可された通行経路以外を走行することは厳禁です。GPS等を活用して経路管理を徹底しましょう。

通行条件の遵守

許可証に付された通行時間帯・誘導車の配置・徐行区間などの条件を必ず遵守します。

特殊車両通行確認制度の活用

令和4年4月から運用開始の特殊車両通行確認制度は、ETC2.0車載器を搭載した車両であれば、オンラインで即時に通行可能経路を確認できます。手続きの簡素化・迅速化が図られており、全日本トラック協会でも積極的な活用を呼びかけています。

国土交通省「特殊車両の通行に関する指導取締りの強化について」(平成20年9月30日 報道発表)

国土交通省 道路局「特殊車両通行制度について」

全日本トラック協会「特殊車両通行許可制度等について」

大阪府「道路法に基づく特殊車両の通行について」

NEXCO西日本「大型・特殊車両や危険物積載車両を運転される方々へ」

道路法 第103条・第104条・第105条・第107条