2025年(令和7年)の制度改正で強化された特車通行時の重量記録保存義務ですが、2026年は本格運用が開始されます。背景や法令および実務を詳しく解説します。
2025年(令和7年)に実施された特殊車両通行制度(特車制度)の改正によって、特殊車両が道路を通行する場合の「重量記録を1年間保存する義務」が明確化されています。
従来の通行許可制度・確認制度に比べて、実際の重量管理が義務として制度化されたことは、道路インフラの保全や安全確保の観点から重要なポイントです。改正の背景、法令の根拠、具体的な要件やデータの保存方法、遵守すべき注意点まで詳しく解説します。

改正の背景、なぜ重量記録の保存義務が導入されたのか?
道路法に基づく特殊車両通行制度は、道路管理者の審査により寸法や重量制限を超える車両の通行を許可・確認する仕組みです。
特殊車両通行制度(特車制度)とは、道路の幅、高さ、重さなどの「一般的制限値」を超える大型・重量車両(特殊車両)が、道路の保全と交通安全のため、事前に道路管理者の許可を得て通行する制度です。
近年、道路の老朽化や橋梁・地盤への負荷が社会問題化しており、実際の車両重量情報を把握して管理する必要性が高まってきました。道路や橋梁は昭和の高度成長期につくられたものが多く、老朽化が目立ってきています。
また、2020年代に導入された「特殊車両通行確認制度」では、事前に登録した車両情報と道路データベースの判定で即時に通行可能経路を示す仕組みが普及していますが、一方で通行実績としての重量情報の裏付けが弱いことへの課題が指摘されていました。
つまり、「特殊車両通行確認制度」によって、登録済みの車両であればシステム上で即時に通行可否が判明するようになりましたが、この利便性と引き換えに、運行後の「ルール遵守の事後検証」を確実に行う必要が出てきたためです。
この実務上の課題を受けて、2025年の制度改正では重量記録の保存義務が明確化・義務化されています。
この制度の背景には、道路インフラの老朽化対策と適正な車両管理に対する社会的要請があります。
物流の停滞を防ぐため手続きの迅速化(DX化)がすすめられる一方で、悪質な過積載を防止するための「管理の見える化」が急務となってきたとも言えます。

どのような法令で義務化されたのか?法令の根拠
本制度の根拠は、道路法(特に特殊車両通行許可関連の規定)およびこれに基づく通行許可・確認制度の法令運用指針にあります。具体的には、この義務は、道路法および同法に基づく「車両の通行の許可の手続き等に関する省令」の改正により規定されています。
これまでは「望ましい」とされていた運用が、2025年(令和7年)の改正によって、「通行確認制度を利用する際の必須要件」として明確に位置づけられました。これによって、記録がない場合は「確認制度の適正な利用」とみなされず、許可の取り消しや今後の申請に影響が出る可能性があります。
特に2025年版ハンドブック・制度改正資料では、「特殊車両通行確認制度を利用して通行した際は、重量記録を1年間保存する義務」が明文化されています。これは、法令上の義務として当該通行の記録と整合性を持たせるためのものです。
また、特車制度を扱う登録センターの運用マニュアルでも、通行時の重量記録を書類または電子データとして1年間保存する必要があることが案内されています。
特殊車両通行ハンドブックの「重量記録の保存」からの引用です。具体的な内容が記載されています。
2025年 国土交通省 特殊車両通行ハンドブック
○重量の記録
通行確認制度では、通行した際の記録として重量記録を通行から1年間、書類または電子データで保存する義務があります。
○重量記録の提出
道路法47条の12第2項の規定に従い、国が重量記録の提出を求めることがあります。
○重量記録の書類
重量記録として、以下の書類(括弧内の情報が記載)のいずれかが必要です。
① 乗務記録(積載貨物重量、積卸の日時・場所)
② 送り状(積載貨物重量、積卸の日時・場所)
③ ①・②に類する書類(積載貨物重量、積卸の日時・場所)
④ 積卸し時における重量測定結果(総重量、測定日時)
道路法47条の12第2項からの引用です。
(登録車両の通行の記録及び報告)
第四十七条の十二
登録車両を第四十七条の十第三項の回答の内容に従つて通行させる者は、当該登録車両ごとに、第四十七条の六第一項第二号及び第三号に規定する国土交通省令で定める基準に従つて、当該登録車両の通行経路及び当該登録車両に積載する貨物の重量を記録するとともに、当該通行に係る通行時間その他国土交通省令で定める事項を記録し、これらを保存しなければならない。
2 国土交通大臣は、第四十七条の四からこの条までの規定を施行するため必要な限度において、国土交通省令で定めるところにより、前項に規定する者に対し、同項の記録その他必要な事項についての報告を求めることができる。
3 国土交通大臣は、前項の規定による報告を受けたときは、登録車両が通行した経路を構成する道路の道路管理者に対し、国土交通省令で定める事項を通知しなければならない。
何を・どのように保存すべきか、具体的な内容
保存対象
- 重量記録1年間保存が義務化で保存すべきデータは次のとおりです。
- 通行した際の重量情報、積載貨物の総重量、積卸し時の重量(測定値)など
- 乗務記録・積卸日時・場所
- 送り状や貨物重量が分かる記録書類
- 重量測定の日時と場所の記録
これらの情報を書面または電子データで記録し保存します。実際の重量の保存要件は、道路管理者からの提示要求に対応できる形で保存しておくことが義務となります。
保存期間と提出義務
保存期間は通行日から1年間です。この期間中は、道路管理者の求めがあれば迅速に提出する義務があります。保存形式は紙媒体でも電子データでも可能ですが、必要時に提示できる形で体系的に管理することが重要です。
電子管理の場合、ファイル名・フォルダ構成・メタデータの付与など、後から検索容易な仕組みを整えることが推奨されます。
遵守上の実務的な注意点
ETC2.0との連動
制度改正によって、ETC2.0を用いた重量記録管理が前提となる場合があります。これにより、走行実績と重量情報の照合が可能になり、保存記録も自動化できるケースがあります。
ただし、ETC2.0の重量推定値だけでなく、積載前後の実測データとの整合性を取ることが重要です。
保存データの信頼性担保
単に数値を保存するだけではなく、誰が計測したのか(責任者)?、どのような測定機器で計測したのか?といった情報も併せて管理することが、後日の問い合わせ時にスムーズに対応できます。
「正確な重量」を知るには荷主からの情報提供が不可欠です。この改正を機に、荷主に対して「法令で1年間の記録保存が義務化されたため、正確な重量情報を書面やデータで提供してほしい」と協力を要請するのもよいでしょう。
違反リスク
必要な重量記録が保存されていない場合、道路管理者から行政指導や罰則の対象となる可能性があります。
現場では、重量過大の疑いが生じた場合に備えて、迅速に過積載の有無を確認できる体制づくりが求められます。
データ形式・バックアップ
電子データ管理では定期的なバックアップと、関連システムのアクセスログ管理が重要です。保存義務期間の終了後も社内記録として保持する運用を検討してください。
許可制度と確認制度
改正した2025年(令和7年)の制度では、従来の特車通行許可制度と、即時回答型の特殊車両通行確認制度が併存しています。
いずれの場合も重量記録の保存義務は発生しますが、特に確認制度を利用する場合は日々の記録管理がより重要になります。これは、確認制度は即時発行される通行「回答書」に基づき通行できる利便性が高い一方で、実際の重量との整合性が制度の信頼性に関係するためです。
特殊車両通行確認制度は、道路法に基づき、一定の大きさや重さを超える「特殊車両」が通行する際、オンラインで即時に通行可能経路を確認・許可する2022年4月施行の新しい制度です。2026年は本格運用の年でもあります。



