特殊車両の申請や特殊車両通行許可でよく出てくる「減トン値」ですが、これは車両の積載能力や通行許可、さらには自動車税・自動車重量税にも関係してきます。車両の最大積載量をあえて減らす手続きですが、「なぜ?せっかくの積載量を減らすのか?」「減トン・増トンにどんなメリットがあるのか?」と疑問に思う方も多いと思います。
特殊車両とは何か?、特例8車種の重量、減トン値の意味、重量制限との関係、ステッカーについて、減トン・増トンのメリットやデメリットについて、根拠法令を踏まえて詳しく解説します。
特殊車両とは何か?
特殊車両とは、道路法上の一般的制限値を超える車両のことをいいます。根拠法令は、道路法や車両制限令になります。幅2.5m、長さ12m、高さ3.8m、総重量20t(道路の種類により異なる)のいずれかの「一般的制限値」を超える車両、または構造・貨物が特殊な車両です。道路の損傷を防ぎ交通の安全を保つため、原則として道路管理者の「特殊車両通行許可」が必要です。
一般的制限値(原則)
- 車両制限令による基本的な車両制限は次のとおりです。
- 総重量:20トン(条件により25トン)
- 軸重:10トン
- 幅:2.5m
- 高さ:3.8m
- 長さ:12m
これらを超えると「特殊車両」となり、特殊車両通行許可が必要になります。
特殊車両通行許可とは、このように幅2.5m、長さ12m、高さ3.8m、総重量20t(一部25t)の「一般的制限値」を超える特殊な車両が、道路を通行する際に道路管理者(国、自治体など)から許可を得る制度です。道路の構造保全、交通の安全・円滑化を目的とし、無許可通行は違反となります。
特例8車種とは?重量はどれくらい?
たとえば、物流の主力車両である「特例8車種」は、一定条件のもとで25トンまで認められる車両です。特車に多い特例8車種の例としては、セミトレーラ・フルトレーラ・大型トラック(特定軸距)・海上コンテナ用シャーシ などです。
重量の目安ですが、一般車両が20tに対して、特例8車種は最大25tとなっています。ダブル連結トラックは最大36t(区間限定)となっています。注意すべきは、これらのトン数は荷物も含めた総重量です。
実際は軸距や軸重条件を満たす必要があります。道路にダメージを与えるのは「総重量」そのものではなく、1本の軸にかかる荷重(=軸重)と車軸の配置間隔(=軸距)です。たとえば、橋梁設計は「どこに、どれだけの荷重がかかるか」で決まります。そのため、特例8車種で総重量25t以下でも軸重が大きすぎると違反ということになります。

減トン値とは?
減トン(げんとん)とは、自動車検査証(車検証)に記載される「最大積載量」を、本来の能力よりも少なく登録することを指します。
通常、トラックなどは「どれだけ多くの荷物を積めるか」が重要視されますが、あえて積載量を減らすことで、車両総重量(GVW)を調整し、維持費の削減や規制のクリアを目的として行われます。
減トン値とは、車両の構造上の最大積載量よりも、あえて登録上の積載量を減らすことをいいます。
たとえば、本来の最大積載量が13tでも登録積載量を11tにすることです。2t分が「減トン値」となります。
減トンでは、トラックの構造変更を行い、車検証上の「最大積載量」を本来の基準より減らして登録することです。クレーンや重い架装を追加して車両重量が増えた際に、最大積載量を減らして計算するケースが多く、自動車税や自賠責保険料の削減、また特定の免許区分に合わせる目的で行われます。
なぜ減トンするのかですが、次のような理由があります。
道路通行許可を取りやすくする
橋梁や道路の耐荷重の関係で、総重量がたとえ、1トンでも違うだけで、通行可否が変わることがあります。減トンすれば、総重量が下がり、軸重も下がって許可ルートが広がるという実務上のメリットがあります。
自動車税・重量税が下がる
日本の自動車重量税は、車両総重量(GVW)に応じて課税されます。
例えば、減トンによって車両総重量が「20t超」から「20t以下」に下がれば、年間の維持費を大きく抑えることが可能です。
減トンすると、車検証上の「最大積載量」が減るため、自動車税(種別割)や自動車重量税が軽減されるケースがあります。ただし、区分の境界を超えない場合は税額が変わらないこともあります。
車庫証明・道路使用制限対策
自治体によっては、車両総重量が一定以上だと車庫制限あり、進入禁止道路が増えるといった事情もあります。減トンにより営業の自由度が上がる場合があります。
特定の橋や道路には「重量制限」があります。減トンして車両総重量を軽くしておけば、特殊車両通行許可が通りやすくなったり、通行ルートの選択肢が増えたりします。
任意保険料の改定
保険会社によっては、最大積載量を基準に保険料を算出する場合があります。積載量を減らすことで保険料が安くなるケースがあります。最大積載量に比例する自動車税や、一定の積載量で保険料が上がる自賠責保険が安くなります。
減トンすると荷物は減る?
たしかに理論上は減ります。たとえば、車両重量が12tで最大積載量が13tの場合、総重量25tとなりますが、これを2t減トンすると最大積載量が11tとなって総重量23tになり、積める荷物は2t減ります。
増トンとは何か?
増トンとは、架装や補強を行って最大積載量を増やすことをいいますが、フレーム強化・車軸強化・制動装置変更・構造変更検査などが必要になります。
増トンすればたくさん積める?
もちろん、たくさん積めますが、道路通行許可が厳しくなったり、ルート制限が増える場合もあります。また、税金が上がりますし、タイヤ・燃費コストが増えることもあります。営業効率と法規制のバランスが重要になります。
過積載
たくさん積めるようになっても過積載は気を付けなければなりません。過積載(かせきさい)とは、トラックなどの貨物自動車が、道路交通法や道路運送車両法で定められた「最大積載量」を超えて荷物を載せて走行する違法行為です。1kgでも超過すれば過積載となり、制動距離の延長や荷崩れ、車両の故障、重大事故を引き起こすリスクがあるため、運転者・事業者・荷主に厳しい罰則が科せられます。
危険性としては、ブレーキの効きが悪化し、重い荷物が横転や重大事故を招くほか、道路橋の劣化など周辺環境へも悪影響(交通公害)を及ぼします。
なお、罰則ですが、違反点数(3点?6点以上)の加算、反則金、懲役、車両の使用停止、事業停止処分など、運転者、運行管理者、さらに荷主にも及ぶので注意が必要です。
増トンと減トン
「減トン」の反対が「増トン」ですが、増トンは、軸重(タイヤ1軸にかかる重さ)を補強するなどして、積載量を増やすことです。メリットとしては、一度に運べる荷物が増え、輸送効率が上がります。
減トンは維持費や規制を優先し、積載量を減らすことですが、メリットとしては税金や保険料が安くなり、走行できる道が広がります。
ステッカーは必要?
特殊車両通行許可を受けた場合、許可証の携行義務があります。現在は電子化が進んでいますが、 許可条件表示、ルート制限表示などの表示義務があります。
最大積載量を変更(減トン)した場合、車両後部に表示する「最大積載量ステッカー」も書き換える必要があります。車検証の記載と車両後部の表示が一致していないと、車検に通りません。ペイントでの書き換えや、市販の数字ステッカーでの修正が必要です。
まとめ
減トンは戦略的な選択と言えます。減トンは一見すると「運べる荷物が減る損な行為」に見えますが、実際には「税金・保険・通行許可」の3面で大きなコストメリットを生みます。特に、常に満載で走るわけではない特殊車両にとっては、非常に有効な経営戦略と言えるでしょう。
なお、特車申請における「減トン」は、車両の最大積載量を意図的に減らして申請することで、通行経路の制限(夜間限定や通行不可)を回避して、24時間通行や経路通過を可能にするための戦略的な手続きです。重さ指定道路など、橋梁や構造物の保全基準を満たすために有効な手段です。



