オールテレーンクレーンとラフタークレーンの違いとは?特殊車両通行許可の扱いも解説

コラム

建設現場や大型設備工事で活躍する「オールテレーンクレーン」と「ラフタークレーン」ですが、どちらも自走式の移動式クレーンになります。しかし、構造・用途・公道走行時の扱いには大きな違いがあります。

特殊車両通行許可においては、「どのような車両構造なのか」「どの程度の重量・寸法なのか」「高速道路を走行できるか」などにより、必要な許可条件や通行条件が変わってきます。

オールテレーンクレーンとラフタークレーンの違いをわかりやすく解説しながら、道路法・車両制限令・特殊車両通行許可制度との関係について詳しく解説します。

オールテレーンクレーンとは

オールテレーンクレーン(All Terrain Crane)は、その名のとおり「あらゆる地形」に対応できる大型移動式クレーンのことです。

舗装道路での高速走行性能と、不整地での走破性能を兼ね備えている点が特徴で、高速道路を利用した長距離移動にも対応しています。

オルテレンクレーン、オールテラインクレーン、オルタークレーンとも呼ばれています。

オールテレーンクレーンの特徴

  • オールテレーンクレーンの主な特徴は次のとおりです。
    • 多軸車両(4軸~9軸程度)が多い
    • 高速走行性能が高い
    • 大型現場向け
    • 吊上げ能力が非常に大きい
    • 公道走行時に分解輸送されるケースが多い
    • ブームやカウンターウェイトを別車両輸送することがある

大型機種では、クレーン上部やカウンターウェイトを装着したままでは道路法上の一般的制限値を超えるため、現場まで分解して搬送する運用が一般的です。

不整地走行から高速道路走行まで、走行に関して高い能力があり、大型機種でありながら狭い現場に進入することもできる。

また、ラフタークレーン(ラフテレーンクレーン)よりも大型化できるために、吊上げ能力を高めることができます。

ラフタークレーン(ラフテレーンクレーン)が走行とクレーン操作を1つの運転席で行うのに対して、このクレーンは走行台車とクレーンにそれぞれ運転席があります。

またトラッククレーン、ラフタークレーン(ラフテレーンクレーン)のほとんどが2軸(4輪)車であるのに対し、最大9軸(18輪)車まであり大型が中心になっています。

ラフタークレーンとは

ラフタークレーン(ラフテレーンクレーン)は、不整地走行を重視した比較的コンパクトな移動式クレーンです。

「ラフター」「ラフテレーン」などと呼ばれることもあります。建設現場で最もよく見かけるクレーンの一つで、狭い現場や都市部工事でも活躍しています。

ラフタークレーンの特徴

  • ラフタークレーンの主な特徴は次のとおりです。
    • 2軸車または3軸車が中心
    • 小回り性能が高い
    • 狭い現場に強い
    • 不整地性能に優れる
    • 比較的短距離移動向き
    • 高速走行性能は限定的

ラフタークレーンは車体がコンパクトで、1人で運転・操作できる構造が多く、現場間移動の機動力に優れています。

ラフテレーンクレーンとも呼ばれており、1つのエンジンを駆動源として走行・旋回・吊り上げなどすべての動作を行ない、走行と操縦を1つの運転台で行ないます。

四輪駆動、四輪操舵システムを装備しているため、悪路や狭路でも走行・作業に対応できるが、走行性能を高くすると強力なブレーキの装着が必要となり急ブレーキをかけるとブームが地面と接触して横転等の危険が高くなるため、ほとんどのメーカーは、最高速度が50km/h(カタログ公表では49km/h)までしか出せないようにしている。

大型のものは全長(12mまで)や全幅(2.5mまで)、重量(20tまで)など一般制限値を超えるため、公道の走行には道路管理者の特殊車両通行許可が必要となります。

法定最低速度が定められている高速自動車国道及び一部の自動車専用道路では、最低速度を下回るため走行できない。一部の大型車種については前後に誘導車を付けて、夜間しか走行できない車もある。

オールテレーンクレーンとラフタークレーンの違い

車両構造の違い

最大の違いは車両構造です。ラフタークレーンは比較的シンプルな2軸や3軸構造が多いのに対し、オールテレーンクレーンは大型化に対応するため、多軸構造となっています。

オールテレーンクレーンは重量分散のため軸数が多く、ステアリング機構も高度です。

高速道路走行性能の違い

オールテレーンクレーンは高速道路走行を前提として設計されている車両が多く、高速移動能力に優れていますが、ラフタークレーンは法定最低速度の関係などから、高速道路を走行できない車種もあります。そのため、現場間移動では一般道中心となるケースが多くなります。

吊上げ能力の違い

一般的に、オールテレーンクレーンの方が大型です。超高層建築、大型橋梁工事、風力発電設備などでは、オールテレーンクレーンが用いられることが多くなりますが、ラフタークレーンは都市部建築や中小規模工事で広く利用されています。

現場への搬入方法の違い

ラフタークレーンは比較的そのまま自走搬入されることが多いですが、オールテレーンクレーンは分解搬送されるケースが多くなります。

特に、カウンターウェイト・ブーム・ジブなどを別車両で輸送することがあります。

特殊車両通行許可とは

道路法では、道路保全や交通安全のため、車両の大きさ・重量に制限が設けられています。

これを超える車両が道路を通行する場合には、特殊車両通行許可が必要になります。

道路法第47条

道路の構造保全・交通危険防止のため、車両制限が規定されています。

道路法からの引用です。

第四十七条 道路の構造を保全し、又は交通の危険を防止するため、道路との関係において必要とされる車両(人が乗車し、又は貨物が積載されている場合にあつてはその状態におけるものをいい、他の車両を牽けん引している場合にあつては当該牽けん引されている車両を含む。第四十七条の五第三号及び第四十七条の六第一項第一号を除き、以下この節及び第八章において同じ。)の幅、重量、高さ、長さ及び最小回転半径の最高限度は、政令で定める。
2 車両でその幅、重量、高さ、長さ又は最小回転半径が前項の政令で定める最高限度をこえるものは、道路を通行させてはならない。

道路法第47条の2

一般的制限値を超える車両について、道路管理者が許可できる制度を定めています。

道路法からの引用です。

(限度超過車両の通行の許可等)
第四十七条の二 道路管理者は、車両の構造又は車両に積載する貨物が特殊であるためやむを得ないと認めるときは、前条第二項の規定又は同条第三項の規定による禁止若しくは制限にかかわらず、当該車両を通行させようとする者の申請に基づいて、通行経路、通行時間等について、道路の構造を保全し、又は交通の危険を防止するため必要な条件を付して、同条第一項の政令で定める最高限度又は同条第三項に規定する限度を超える車両(以下「限度超過車両」という。)の通行を許可することができる。

車両制限令第3条

一般的制限値が定められています。

  • 車両の主な一般的制限値は次のとおりです。
    • 幅:2.5m
    • 長さ:12m
    • 高さ:3.8m
    • 総重量:20t(条件により緩和あり)

車両制限令からの引用です。

(車両の幅等の最高限度)
第三条 法第四十七条第一項の車両の幅、重量、高さ、長さ及び最小回転半径の最高限度は、次のとおりとする。
一 幅 二・五メートル
二 重量 次に掲げる値
イ 総重量 高速自動車国道又は道路管理者が道路の構造の保全及び交通の危険の防止上支障がないと認めて指定した道路を通行する車両にあつては二十五トン以下で車両の長さ及び軸距に応じて当該車両の通行により道路に生ずる応力を勘案して国土交通省令で定める値、その他の道路を通行する車両にあつては二十トン
ロ 軸重 十トン
ハ 隣り合う車軸に係る軸重の合計 隣り合う車軸に係る軸距が一・八メートル未満である場合にあつては十八トン(隣り合う車軸に係る軸距が一・三メートル以上であり、かつ、当該隣り合う車軸に係る軸重がいずれも九・五トン以下である場合にあつては、十九トン)、一・八メートル以上である場合にあつては二十トン
ニ 輪荷重 五トン
三 高さ 道路管理者が道路の構造の保全及び交通の危険の防止上支障がないと認めて指定した道路を通行する車両にあつては四・一メートル、その他の道路を通行する車両にあつては三・八メートル
四 長さ 十二メートル
五 最小回転半径 車両の最外側のわだちについて十二メートル

クレーン車は「構造が特殊な車両」

クレーン車は、道路法上「構造が特殊な車両」に分類されます。

国土交通省でも、「トラッククレーン等自走式建設機械」は特殊車両として説明されています。積載物が特殊なのではなく、車両そのものの構造が特殊であるため、特殊車両通行許可の対象となります。

オールテレーンクレーンの特殊車両通行許可上の特徴

超重量車両になりやすい

オールテレーンクレーンは大型・多軸構造のため、総重量や軸重が問題となるケースが多くあります。

特に、軸重・隣接軸重・最小回転半径・通行可能橋梁などが重要な審査ポイントになります。

分解輸送が前提になることも多い

特車通行許可申請では、本体・カウンターウェイト車・ブーム搬送車などに分けて申請することがあります。特に大型機種では、分解しないと通行許可が成立しないケースもあります。

通行条件が厳しくなりやすい

大型オールテレーンクレーンでは、夜間通行限定・誘導車配置・徐行・個別審査などの条件が付されることがあります。橋梁や交差点条件により、通行ルートが大きく制限される場合もあります。

ラフタークレーンの特殊車両通行許可上の特徴

比較的取り扱いやすい

ラフタークレーンはオールテレーンクレーンに比べると小型であり、比較的許可取得しやすい傾向がありますが、近年の大型ラフターでは重量超過となるケースも多く、特殊車両通行許可は依然として重要です。

高速道路走行に制限がある場合も

車種によっては高速道路走行が困難であるため、一般道中心の経路設定が必要になります。そのため、交差点旋回・市街地通行・電線・標識支障などの確認が重要になります。

特殊車両通行許可で重要となるポイント

車検証情報の正確性

クレーン車は軸数・軸距・輪荷重などが特殊なため、車検証情報や諸元表の確認が非常に重要です。

実際の走行状態

ブーム格納状態・カウンターウェイト装着有無・アウトリガー状態などにより、申請内容が変わります。

通行経路選定

クレーン車は旋回半径が大きいため、単純な最短経路では通行できないことがあります。

特に都市部では、狭小道路・電線・橋梁・交差点形状などの確認が重要です。

オールテレーンクレーンとラフタークレーンの比較まとめ

項目オールテレーンクレーンラフタークレーン
車両規模大型中小型中心
軸数多軸2?3軸中心
高速走行得意制限ありの場合も
小回りやや不利優秀
吊上げ能力非常に大きい中規模中心
特車許可難易度高め比較的取得しやすい
分解輸送多い少ない

まとめ

オールテレーンクレーンとラフタークレーンは、どちらも移動式クレーンですが、構造・用途・公道走行性能・特殊車両通行許可の実務に大きな違いがあります。

特に特殊車両通行許可では、総重量・軸重・軸距・回転半径・高速道路利用可否・分解輸送の有無などが重要な判断ポイントになります。

大型オールテレーンクレーンでは、夜間通行や誘導車など厳しい条件が付されることも多く、専門的な経路設計や許可申請ノウハウが必要となります。

一方、ラフタークレーンでも大型化が進んでおり、適切な特殊車両通行許可取得が重要です。

参照・参考資料

国土交通省 特殊な車両とは
国土交通省 特殊車両通行制度について