クローラークレーンの基礎知識と特殊車両通行許可の扱いを詳しく解説

コラム

建設現場や大型インフラ工事で活躍する「クローラークレーン」は、大型かつ重量のある建設機械です。そのために、公道を移動する場合には、通常のトラックとは異なる法規制が関係してきます。特に重要となるのが「特殊車両通行許可」です。

実際は、クローラークレーンは自走できるのか?、分解輸送が必要になるのか?、ラフタークレーンとの違いは何か?、特殊車両通行許可と制限外積載許可の違いは何か?などの質問が多くあります。

クローラークレーンの基本構造から、道路法上の扱い、特殊車両通行許可との関係、必要となる許可の種類、実務上の注意点まで、法令などをわかりやすく、詳しく解説します。

クローラークレーンとは

クローラークレーンとは、履帯(クローラー・キャタピラー)を備えた移動式のクレーンのことです。

一般的なタイヤ式クレーンとは異なっており、接地面積が大きいために、軟弱地盤や不整地でも高い安定性を確保することができます。

大型建築工事、橋梁工事、港湾工事、プラント工事などで広く使用されています。

特徴としては、履帯(クローラー・キャタピラ)で走行します。非常に重量が大きく、公道高速走行には適していません。大型機は分解輸送が前提になります。

クローラ式の走行装置の上部に運転室、巻上装置、ブーム起伏装置、旋回装置などが架装されています。それらの動力はディーゼルエンジンで駆動される油圧ポンプから各作業装置の油圧モータに伝達されます。

下部走行装置は上部旋回体を支えるカーボディ、旋回ベアリング、クローラフレーム、シューなどで構成され、走行用動力として上部旋回体から油圧が供給されます。

クローラークレーンは公道を自由に走れるのか?

クローラークレーンは原則として一般車両のように自由に公道走行できるわけではありません。理由は、道路法上の「一般的制限値」を超えるケースが多いためです。

国土交通省では、一定の寸法・重量を超える車両について、「特殊車両通行許可」が必要であると定めています。

特殊車両通行許可とは

特殊車両通行許可とは、道路法に基づき、一定の寸法・重量制限を超える車両について、道路管理者が個別に通行を認める制度です。

  • 特殊車両通行許可制度の根拠法令は、主に次のとおりです。
    • 道路法第47条
    • 道路法第47条の2
    • 車両制限令

道路は一定の車両規格を前提として設計されていますので、過大な重量や寸法の車両が通行すると、橋梁損傷、路面破損、交通障害、接触事故などの危険が生じるために、一定基準を超える車両は許可制となっています。

道路法第47条

道路の構造保全・交通危険防止のため、車両制限が規定されています。

道路法からの引用です。

第四十七条 道路の構造を保全し、又は交通の危険を防止するため、道路との関係において必要とされる車両(人が乗車し、又は貨物が積載されている場合にあつてはその状態におけるものをいい、他の車両を牽けん引している場合にあつては当該牽けん引されている車両を含む。第四十七条の五第三号及び第四十七条の六第一項第一号を除き、以下この節及び第八章において同じ。)の幅、重量、高さ、長さ及び最小回転半径の最高限度は、政令で定める。
2 車両でその幅、重量、高さ、長さ又は最小回転半径が前項の政令で定める最高限度をこえるものは、道路を通行させてはならない。

道路法第47条の2

一般的制限値を超える車両について、道路管理者が許可できる制度を定めています。

道路法からの引用です。

(限度超過車両の通行の許可等)
第四十七条の二 道路管理者は、車両の構造又は車両に積載する貨物が特殊であるためやむを得ないと認めるときは、前条第二項の規定又は同条第三項の規定による禁止若しくは制限にかかわらず、当該車両を通行させようとする者の申請に基づいて、通行経路、通行時間等について、道路の構造を保全し、又は交通の危険を防止するため必要な条件を付して、同条第一項の政令で定める最高限度又は同条第三項に規定する限度を超える車両(以下「限度超過車両」という。)の通行を許可することができる。

一般的制限値とは

一般的制限値が定められています。

  • 車両の主な一般的制限値は次のとおりです。
    • 幅:2.5m
    • 長さ:12m
    • 高さ:3.8m
    • 総重量:20t(条件により緩和あり)

車両制限令からの引用です。

(車両の幅等の最高限度)
第三条 法第四十七条第一項の車両の幅、重量、高さ、長さ及び最小回転半径の最高限度は、次のとおりとする。
一 幅 二・五メートル
二 重量 次に掲げる値
イ 総重量 高速自動車国道又は道路管理者が道路の構造の保全及び交通の危険の防止上支障がないと認めて指定した道路を通行する車両にあつては二十五トン以下で車両の長さ及び軸距に応じて当該車両の通行により道路に生ずる応力を勘案して国土交通省令で定める値、その他の道路を通行する車両にあつては二十トン
ロ 軸重 十トン
ハ 隣り合う車軸に係る軸重の合計 隣り合う車軸に係る軸距が一・八メートル未満である場合にあつては十八トン(隣り合う車軸に係る軸距が一・三メートル以上であり、かつ、当該隣り合う車軸に係る軸重がいずれも九・五トン以下である場合にあつては、十九トン)、一・八メートル以上である場合にあつては二十トン
ニ 輪荷重 五トン
三 高さ 道路管理者が道路の構造の保全及び交通の危険の防止上支障がないと認めて指定した道路を通行する車両にあつては四・一メートル、その他の道路を通行する車両にあつては三・八メートル
四 長さ 十二メートル
五 最小回転半径 車両の最外側のわだちについて十二メートル

ただし、道路条件によって特例はありますが、クローラークレーンは、特に「総重量」「軸重」「幅」で超過するケースが多くあります。

クローラークレーンとラフタークレーンの違い

ラフタークレーン

ラフタークレーンはタイヤ式です。ナンバー登録を行い、比較的一般道路を自走しやすい特徴がありますが、大型機種では特殊車両通行許可が必要になることがあります。

大型特殊自動車に分類されますが、タイヤで公道を比較的高速で自走できることから、トレーラーに積載しての移動とセッティングの手間が省けることが最大のメリットとなっています。

また、荒れた地形などの不整地も走行することができます。ラフテレーン(rough terrain)は不整地を意味しています。

クローラークレーン

クローラークレーンはキャタピラーなどの履帯走行であり、道路損傷リスクが高く、走行速度も極めて低速なために、分解輸送、トレーラー輸送、養生、通行経路制限などが必要になるケースが多くあります。

クローラークレーンは「特殊な車両」に該当する

国土交通省では、「車両の構造が特殊」である車両として、自走式建設機械などを特殊車両として扱っています。クローラークレーンは典型的な「特殊な車両」に該当します。

つまり、通常車両ではなく、構造自体が特殊であり、重量・寸法が大きいという理由から、特殊車両通行許可の対象となる可能性が高い車両です。

クローラークレーンの輸送方法

大型クローラークレーンは、一般的に分解して輸送されます。主な輸送形態としては、本体・ブーム・カウンターウエイト・クローラー部分などに分割して、複数台のトレーラで運搬するケースが一般的です。この場合、輸送用トレーラ側で特殊車両通行許可が必要になることがあります。

自走する場合の注意点

小型クローラークレーンでは、現場近距離程度の公道移動を行うこともありますが、自走には慎重な検討が必要です。特に問題となるのは、路面損傷・舗装破壊・橋梁荷重・走行速度・道路占有などです。場合によっては、特殊車両通行許可、道路使用許可や制限外積載許可など、複数許可が必要になるケースがあります。

道路使用許可とは、道路を本来の目的(人や車の通行)以外で一時的に使用する際に、所轄の警察署長から受ける許可のことです。

制限外積載許可は、道路交通法で定められた積載物の大きさ・重量・積載方法の制限を超える貨物を、やむを得ず運搬する際に必要な警察署長の許可のことです。

特殊車両通行許可と道路使用許可の違い

特殊車両通行許可と道路使用許可は別制度です。

特殊車両通行許可制度の根拠法令は道路法、管轄は、国や都道府県などの道路管理者であり、制度の目的は道路構造保全にあります。

道路使用許可の根拠法令は道路交通法であり、管轄は警察署です。制度の目的は交通安全確保にあります。

特殊車両通行許可制度は「道路を壊さないため」の許可ですが、「交通を危険にしないため」の許可で役割が異なります。特殊車両通行許可制度が国土交通省が管轄しているのもそのためです。クローラークレーンでは、両方とも必要になるケースも少なくありません。

特殊車両通行確認制度との関係

「特殊車両通行確認制度」も導入されています。登録車両について電子的に迅速確認を行う制度です。特殊車両通行確認制度は、一定の基準を超える「特殊車両」が通行する場合、事前に車両情報を登録しておくことで、通行可能な経路をオンラインで24時間いつでも即時に検索・確認できる制度ですが、クローラークレーンのような特殊性の高い車両では、基本的に個別審査、条件付与、経路限定となることも多くて、従来型の特殊車両通行許可制度による申請が必要になる場合があります

夜間通行条件がつく場合もあります。大型クレーンでは夜間通行限定となるケースがあります。

誘導車の配置も必要になることもあります。幅・長さによっては誘導車が必要です。

通行経路制限がついて、橋梁や狭小道路を回避する必要があります。

また、分解前提で、大型機は「そのまま通れる」と考えないことが重要です。

クローラークレーンは、建設現場で重要な役割を果たす一方、道路法上は非常に厳しい規制対象となる特殊車両です。特に、総重量超過、幅超過、履帯構造、分解輸送、経路制限など、通常車両とは異なる専門的知識が必要になります。

また、特殊車両通行許可・道路使用許可・制限外積載許可などが複合的に関係するため、事前確認が極めて重要です。

クローラークレーンの運搬・通行では、車両条件・道路条件・輸送方法を総合的に確認し、適切な許可取得を行うことが重要といえるでしょう。

参照・根拠法令

・道路法
・車両制限令
・道路交通法

国土交通省 特殊車両通行制度について
国土交通省関東地方整備局 特殊な車両とは
国土交通省関東地方整備局 特殊車両通行許可制度について
国土交通省中国地方整備局 特殊車両通行許可制度
警察庁 道路使用許可の概要、申請手続等
日本建設機械工業会 クローラクレーン