長さ21mを超えるフルトレーラ連結車(ダブル連結トレーラー)は、国の認定を受けた特例制度により通行が可能となっていますが、車両構造・経路・運転者・管理体制のすべてにおいて高い安全基準を満たす必要があります。
この制度を利用することで、物流効率を大幅に高めて、CO2削減による環境問題やドライバー不足の対策ができると国交省が推進しています。国土交通省の資料をもとにして詳しく解説します。
フルトレーラ連結車(ダブル連結トレーラー)とは
フルトレーラ連結車とは、けん引車(トラクタ)とフルトレーラ(荷台を有する被けん引車)を連結した車両のことです。
一般的なトレーラ(セミトレーラ)は、けん引車の後部に連結して荷重の一部をトラクタで支えますが、フルトレーラは前後に車軸を持ち、荷重をすべて自らの車軸で支える点が異なります。
このうち、2台のフルトレーラを1台のトラクタでけん引する構造のものをダブル連結トレーラーと呼びます。
全長が21mを超えるために、通常は道路運送車両法上と道路法上の制限を超える「特殊車両」に該当し、特例の緩和措置(特車通行許可の特例)を受けて通行が認められています。
緩和の要件
ダブル連結トレーラーは次の条件を満たす場合に21mを超える車両でも通行を認める緩和措置が設けられています。
この緩和の目的としては、トラックドライバー不足対策の輸送効率の向上、CO2排出量削減、物流の省人化を図ることにあります。
ただし、車両構造・経路・運行管理・運転者の条件をすべて満たす必要があります。

車両の条件
国土交通省が認定する「ダブル連結トレーラー運行モデル車両」として登録されている必要があります。
- 緩和の対象となる車両は、次の要件を満たす必要があります。
- 連結全長は25m以下
- 最小回転半径は12.5m以内
- 連結装置(ドーリ)が安全基準に適合していること
- 制動装置はトラクタ・トレーラ間で制動連動が確保されていること
- 車両安定装置(ESPなど)の装備
- 車線逸脱警報装置、衝突被害軽減ブレーキの搭載
- 車両運行記録装置(デジタコ)・GPS管理装置による運行管理
車両装置の条件
- 国交省の資料では21m超車両に次の16項目の装置を装備できることとなっています。
- アンチロックブレーキシステム
- 衝突被害軽減ブレーキ又は自動車間距離制御装置
- 車両安定性制御システム(4)車線逸脱警報装置
- 後部視界を確保するための被けん引車後端のカメラシステム及びモニター
- デジタルタコグラフ
- 車載型自動軸重計測装置(OBW)
- エアサスペンション
- ディスクブレーキまたはドラムブレーキ
- リターダ(補助ブレーキ)
- デフロックまたはトラクションコントロールシステム(空転防止装置)
- 間接視界を確保するための装置(バックミラー等)
- 被けん引車のバックライト
- 車両の長さ及び「追越注意」の文言を表示するプレート
- 業務支援用ETC2.0車載器
通行経路の条件
通行できる道路は、すべての道路ではありません。国土交通省が定めた「指定経路(ダブル連結トレーラー通行可能ルート)」のみが対象です。
・主に高速道路およびその周辺の一部一般道
・出入り口から物流拠点(車庫・倉庫)までの短区間一般道を含む場合あり
・通行可能経路は国交省「ダブル連結トレーラー通行経路マップ」で公表
・一般道区間の通行には個別に特車通行許可申請が必要
国土交通省の資料から引用の地図です。

積荷の条件
- 緩和を受ける車両に積載できる荷物にも次のとおり制限があります。
- 積荷は通常の定型貨物(パレット積み等)が原則
- 危険物や特殊貨物は対象外
- 荷重の偏りがないように均等積載すること
- 積載重量は車両総重量や軸重の制限内であること
安全性確保のため、荷崩れ防止装置や固定具の使用が必要です。また、大量の液体や動物も積めません。
運転者の条件
ダブル連結トレーラーの運転は、高度な運転技能が求められるため要件が定められています。
次の条件1もしくは条件2を満たす必要があります。
条件1
務経験:大型自動車運転業務に直近5年以上従事
免許:けん引免許5年以上の保有
安全教育:最低2時間の訓練
条件2
業務経験:大型自動車運転業務に直近3年以上従事
免許:けん引免許1年以上の保有
安全教育:最低12時間の訓練
その他:直近3年間無事故・無違反
通行の条件
- 緩和措置に基づく通行にあたっては、次のような条件が課せられます。
- 事前に認定されたルートのみ通行可能
- 悪天候・強風時は通行禁止
- 夜間限定運行、または交通量の少ない時間帯指定がされる場合あり
- 連結・切り離しは指定場所(中継基地)でのみ実施可
- 通行時には「緩和車両識別標識」を掲示
申請の流れ
ダブル連結トレーラーで21mを超える車両を運行するためには、次の手順で申請を行います。
1.車両構造の確認・認定申請
国交省のダブル連結トレーラー認定制度に基づき、構造要件を審査
2.運行経路の確認
指定ルートを確認し、一般道区間がある場合は特車通行許可の経路指定を作成。
3.特車通行許可申請(道路法第47条の2)
「特殊車両通行許可オンラインシステム」で申請
4.許可後、標識交付・識別マーク表示
通行条件を遵守して運行開始
5.運行記録・報告義務
実績報告や運行データの保存・提出が求められる場合があります。



