従来は、全長21m以下のフルトレーラーが一般的でしたが、CO2環境問題や運転手の人手不足問題解決を目指した規制緩和によって、全長25mのトレーラーが登場しました。この全長25mで大型トラック2台分の輸送能力を持つトラックのことをダブル連結トレーラー(ダブル連結トラック)と呼んでいます。それでは詳しく解説します。
フルトレーラーとダブル連結トレーラーの違い

フルトレーラーとは、牽引するトラック(牽引車)とトレーラー(被牽引車)がそれぞれ独立した車軸を持ち、トレーラーの前後両方に車軸がある構造の車両のことをいいます。牽引車の後部に「ドローバー(けん引棒)」で接続されており、トレーラー自体も自立して走行できるのが特徴です。

*イラストと国交省のでもお分かりのとおりダブル連結トレーラーはトレーラー部が2台(2倍)になっています。
ダブル連結トレーラーは、トラクタ(セミトレーラーをけん引する車両)に1台目のセミトレーラーを接続して、その後に、もう1台のセミトレーラーを中間連結装置(ドーリー)を介して連結します。このようにセミトレーラーとセミトレーラーの構成、セミトレーラーがダブルで2台となっているのが特徴です。総重量と総延長は、両方ともに大きくなります。
ダブル連結トレーラーでは、一般的な大型トラック(10トン車クラス)約2台分の貨物を一度に輸送する能力を持ちますので、1台の運行で2台分の輸送をまかなえるため、輸送効率が大幅に向上してトラック輸送の省人化に大きく貢献します。
フルトレーラーとダブル連結トレーラーの積載量
フルトレーラーの最大積載量は一般的に20~25トン程度です。車両総重量は約36トン以下に制限されるケースが多く、積載容量よりも取り回しやすさが重視されます。
ダブル連結トレーラーは最大積載量40トン以上(最大総重量75トン程度)が可能で、国土交通省が進める「ダブル連結トラック(スーパーフルトレーラー)」の実証実験では、最大積載量が通常のトレーラーの約2倍となっています。
国土交通省は、大量の輸送を一度でできるためにCO2の削減やドライバー不足対策にもなるということで推進しています。
フルトレーラーとダブル連結トレーラーの寸法
両者は全長だけが異なっています。
- 道路運送車両法で定められた一般的な最大寸法は次のとおりです。
- フルトレーラー 全長約18m・全幅2.5m・全高3.8m
- ダブル連結トレーラー 全長最大25m・全幅2.5m・全高3.8m
ダブル連結トレーラーは総延長25m特例制度によって、指定経路においてのみ通行が認められています(国土交通省の「ダブル連結トラック実証実験」)。一般道路では25m超の走行はできません。
フルトレーラーとダブル連結トレーラーの用途
フルトレーラー
地方間輸送や工場間輸送、フェリー積み込みを前提とした輸送など、中距離の輸送などで使われています。ドライバーが荷台を切り離してトラック単体で走行できるため、港湾や工場などでよく使われるのが特徴です。
ダブル連結トレーラー
高速道路中心の長距離幹線輸送に特化しています。物流拠点間(東京~大阪間など)の大量輸送に適しており、従来2台で運んでいた荷物を1台で運搬できるため、効率化・省人化・環境負荷軽減を目的に国交省が中心になって導入をすすめています。
フルトレーラーとダブル連結トレーラーに関する法律
両者とも道路運送車両法・道路交通法・道路法などの複数の法律に基づいて運行されます。
- 主な関係法令は次のとおりです。
- 道路運送車両法施行規則(車両構造・寸法・重量などの基準)
- 道路交通法(けん引車両の運行、連結数の制限)
- 道路法第47条の2(特殊車両通行許可)重量・寸法が制限値を超える場合の許可
- 車両制限令(昭和36年政令第265号)軸重・総重量・長さ等の制限
特にダブル連結トレーラーは、通常の基準を超えるため、国交省の特例許可制度に基づく運行が義務付けられています。
フルトレーラーとダブル連結トレーラーの免許・資格
フルトレーラーとダブル連結トレーラーの両方ともに、けん引車を運転するには牽引免許が必要です。
特にダブル連結トレーラーの運転には高い技能と経験が必要になります。また、ダブル連結トレーラーは車体が長く、通常のけん引車よりも運転難易度が高いため、運送会社では社内での専門研修や実技訓練制度を設けることが多いです。
フルトレーラーとダブル連結トレーラーの道路法などの許認可
特殊車両通行許可(道路法第47条の2)
車両総重量や車幅・車長が車両制限令の限度を超える場合は、道路管理者の通行許可が必要です。特にダブル連結トレーラーはこの特例に基づき、国交省が定めた指定ルート(高規格幹線道路など)のみ通行可能となっています。
運送事業許可
営業目的で運行する場合は、一般貨物自動車運送事業許可(貨物自動車運送事業法)が必要になります。フルトレーラーとダブル連結トレーラーともに、事業者単位での許可取得と車両登録が必要になります。
安全管理・点検義務
けん引装置、連結装置、制動装置については、道路運送車両法の保安基準に基づく定期点検義務があります。ダブル連結車の場合は特にドーリー連結部の整備管理が重要です。
Q&A
まとめをかねて、Q&Aをつくりました。参考にしてください。



