ETC2.0の業務支援用と一般用の違いについて特車通行許可関係を解説

コラム

ETC2.0の「業務支援用」と「一般用」の違いは、特に特殊車両通行許可の申請に関係してきますので詳しく解説します。

ETC2.0は新しい運行支援ツールで、業務支援用は運送事業や特殊車両運行を効率化する機能を備えていますが、ハードウエアを取り付けるだけで業務機能を使えるとは限りません。

業務支援用を一般車に取付けることは技術的に可能であっても、メーカー・サービス提供者・保険会社・道路管理者(必要に応じて)へ確認して、必要な設定変更や契約の見直しをした上で運用してください。

また、特車ゴールド制度を利用する必要がない一般車の場合は、プライバシー保護の観点から、あえて業務支援用を選ぶメリットは少なく、一般用車載器を選ぶのが一般的です。

特車ゴールドとは、業務支援用ETC2.0車載器を搭載した特殊車両が、特殊車両通行許可の更新手続きを簡素化して、大型車誘導区間内での自由な経路選択(迂回)を可能にする制度です。これは物流効率化を目的として2016年1月から導入されました。

特殊車両通行許可とは

参照元:国土交通省のサイト
https://www.mlit.go.jp/road/tokusya/

道路は、一定の重量と寸法(一般的制限値)の車両が安全で円滑に通行できるよう設計されていますが、一般的制限値を超える車両は、道路の構造や交通に支障を及ぼすおそれがあるので原則として通行することはできません

しかし、業務上などの理由から一般的制限値を超える大型車両の通行が必要となる場合がありますので、道路管理者が車両の構造、または車両に積載する貨物が特殊であると認める場合に限って道路の構造を保全し、または交通の危険を防止するために必要な条件を付してこのような車両(特殊車両)の通行を可能とする特殊車両通行制度があります。

この許可は、道路管理者(国道なら国土交通省、都道府県道なら県など)へ事前に申請して経路ごとの可否を確認・許可を受けることで発行されます。許可は日時・経路・速度制限・待避場所などの条件付きで交付されることが多く、安全確保と道路破損防止が目的です。

申請と管理の電子化もすすんでおり、通行計画や経路情報、検査データと現場情報を連携して運行支援する仕組みが整いつつあります。また、ETC2.0の機能が特殊車両の運行管理や許可情報の利活用に役立つ場面が増えています

道路法第47条の2からの引用です。

第四十七条

道路の構造を保全し、又は交通の危険を防止するため、道路との関係において必要とされる車両(人が乗車し、又は貨物が積載されている場合にあつてはその状態におけるものをいい、他の車両を牽けん引している場合にあつては当該牽けん引されている車両を含む。第四十七条の五第三号及び第四十七条の六第一項第一号を除き、以下この節及び第八章において同じ。)の幅、重量、高さ、長さ及び最小回転半径の最高限度は、政令で定める。

2 車両でその幅、重量、高さ、長さ又は最小回転半径が前項の政令で定める最高限度をこえるものは、道路を通行させてはならない。

ETC2.0とは

参照元:ETC総合情報ポータルサイト
https://www.go-etc.jp/etc2/

料金収受だけしていたETCが進化してETC2.0となりました。高速道路と自動車が情報を連携して、渋滞の迂回ルートを教えてくれたり、安全運転をサポートしたり、災害時の適切な誘導をしてくれたりします。

全国高速道路に設置された通信アンテナ「ETC2.0路側機」とETC2.0対応車載器、カーナビが、高速大容量のDSRC通信方式によって双方向通信することでサービスを実現しています。

従来のETCに比べて「車車間・路車間通信」や高度な位置情報サービス、交通情報の受信・提供、車両属性(車種や搭載センサー情報等)に基づくサービス提供などを可能にしたITS(高度道路交通システム)の一部です。

  • ETC2.0の特徴は次のとおりです。
    • 道路側設備との双方向通信により、より細かい道路情報(渋滞、規制、迂回情報など)を車載器へ提示できる高精度な位置情報と通信。
    • プローブ情報(実車走行データ)を匿名化して道路管理や交通政策に活かすことができる道路管理者向けデータ提供。
    • 運送業向けの運行支援(ルート提案、規制回避支援)、駐車場やサービスエリア連携、災害時の情報配信などが可能となる付加サービス。
    • 料金自動支払い機能は引き続き利用可能で従来ETC機能の継承。

ETC2.0は料金を払うための機器ではなく、車両種別や業務内容に応じた情報提供・支援を行うプラットフォームとして進化しました。

業務支援用と一般用の違い

ETC2.0車載器には用途や機能の違いで業務支援用(業務用)と一般用(個人向け)というのがあります。

機能(ソフトウェア/サービス面)

業務用

運送や物流事業者向けの高度な運行支援機能(最適ルート案内、通行規制回避、許可経路の提示、運行履歴管理、車両管理システムとの連携等)を持つことが多く、プローブデータの提供やフリート管理(複数車両の追跡・稼働管理)と連携するAPIやクラウドサービスが利用可能です。特殊車両の許可条件(高さや重量に基づく経路除外など)を踏まえたナビゲーション機能を備えている場合もあります。

一般用

個人ドライバーや一般乗用車向けに、ETCによる料金支払い、一般的な道路情報(渋滞、事故情報など)の受信、商用機能の簡易版を提供しています。

ハードウェアと認証

基本的にETC2.0車載器自体のハードウェアは共通規格になっていますが、ファームウェア(ソフト)や追加モジュールが業務向けには搭載されていることがありますし、業務用は「事業者ID」や「車両管理情報」を紐付けて使う契約形態があり、利用者側での認証・アカウント管理が異なる場合があります。

契約と料金

業務(支援)用は、事業者向けのサービス契約(クラウドサービス利用料、データ提供料、連携費用など)が別途発生する場合がありますが、一般用はカード会社やITSサービスプロバイダの標準プランで利用可能で、追加費用は比較的少ない。

法令や申請との連携

業務支援用は特殊車両通行許可申請のワークフロー(経路照会、許可条件の自動チェック)や実行時のログ保存に対応することで、許可取得・運行管理の効率化に貢献することがあります。一般用にはこのような申請連携機能は基本的に想定されないため、特殊車両運行には不十分な場合がありますので注意が必要です。

プライバシーとデータ利活用

業務用では車両運行データを事業運営に活用しやすい形で収集・保存するため、データの取扱(保存期間・共有先)が重要になりますが、一般用は個人プライバシーを重視した設計になっていることが多いです。

業務支援用を一般車へ取付けてもいいの?

物理的に機器を装着することは可能な場合が多いですが、運用上・契約上・法的な観点で注意点があるため、必ず事前確認と手続きを行うべきです。

業務支援用は本来、業務で特殊車両を運行する事業者が特車ゴールド制度を利用するために、全走行履歴情報を国に提供する仕様になっています。一般車に業務支援用を取り付けた場合でも、その車載器から発信されるデータは業務支援用の仕様に従って処理されるため、起終点を含む全ての走行履歴が国土交通省のサーバーに蓄積されることになります。

特車ゴールドは、業務支援用ETC2.0車載器を搭載した特殊車両が、特殊車両通行許可の更新手続きを簡素化し、大型車誘導区間内での自由な経路選択(迂回)を可能にする制度です。

ここがポイント!

特に特車ゴールド制度を利用する必要がない一般車の場合は、プライバシー保護の観点から、あえて業務支援用を選ぶメリットは少なく、一般用車載器を選ぶのが一般的です。

製造元・販売店の確認

業務支援機能がある車載器は、設定やプロファイル(車両属性、事業者ID等)を事業者向けに出荷している場合があります。個人車に付ける場合、メーカーや販売店に「一般車へ設置して問題ないか」確認してください。必要ならファームウェアの切替や設定の変更を依頼します。

サービス提供会社(契約先)の確認

業務用機能を使うには事業者向け契約が必要で、事業者IDの登録やクラウド連携契約が含まれることがあります。個人でその契約を継続することができるか、追加費用が発生するかを確認します。

車検・登録・保険への影響

車載器の取り付け自体は通常車検に直接影響しませんが、車両の用途(事業用か私用か)や車両管理のあり方が変わると、保険や税務の扱いが変わることがあります。特に事業用扱い(運送事業など)に該当する使い方を意図せずにしてしまうと、保険が適用されない・税務上の問題が生じることがあるため注意が必要です。

特殊車両通行許可との関連

業務支援用車載器が特殊車両の経路選定や許可情報と連携する機能を持っていたとしても、車載器を付けたからといって自動的に許可が下りるわけではありません。特殊車両は車両仕様自体(幅・高さ・重量)が基準に該当するため、必要なら従来どおり所管へ申請する必要があります。業務用機能は「申請や運行の支援」をするものであり、許可の代替にはなりません。

プライバシーとデータ提供

業務用機器は走行ログや位置情報を事業者システムへ送信する設計になっている場合があります。個人の車に設置した場合、自分の走行データがどこへ送られるのか、どの程度保存されるのか?などを確認して、同意できない場合は設定変更や業務機能の無効化を依頼してください。