長尺輸送のポールトレーラーの特徴・用途・構造・法律など解説

コラム

長尺輸送のポールトレーラーの特徴・用途・構造・法律など解説します。実務・法令・運送現場の観点を踏まえた専門的な内容となっています。

ポールトレーラーとは

ポールトレーラーとは、長尺物(ちょうじゃくぶつ)を輸送するために設計された特殊トレーラーのひとつです。長尺物の中にはロケットの筐体ということもあります。このイラストのような構造になっています。

ポールトレーラーにイラスト

一般的なセミトレーラーのように荷台を持たずに、前後2台の車両を鋼管や伸縮シャフトなどのポールで連結する構造となっています。一般のセミトレーラーやフルトレーラーでは運べない、非常に長い荷物を輸送する際に使用されます。

その場合、積載物の一部が車体となります。つまり、荷台がなく、鋼材、木材、コンクリート柱などの積載物自体が、牽引車と後部の台車(ドーリー)を連結する梁の役割を果たします。連結部は、運搬する荷物の長さに合わせて伸縮・調節できる構造になっています。

  • ポールトレーラーの積載物の例は次のような長尺資材です。
    • 電柱や鉄塔部材
    • 橋梁桁(きょうりょうけた)
    • 風力発電ブレード
    • 大径鋼管、レール、パイプライン材

こうしたものは全長20mを超えることも多いために、通常のトレーラーでは対応できないので、ポールトレーラーで運搬することになります。

ポールトレーラーの特徴

ポールトレーラーの大きな特徴は、荷台を持っておらず、長さを自由に調整できる伸縮構造にあります。これによって、積載物の長さに合わせて車体全長を自在に調整できるため、輸送効率と安全性を両立しています。

伸縮式のポール構造

荷物の長さに合わせてポール(シャフト)を伸縮させることができます。長さは10m~30m超まで対応する車両もあります。

積載物の長さに柔軟に対応できます。牽引車と後部台車の間隔を調整できるため、様々な長さの長尺物に対応可能になっています。

高い旋回性能

後部台車(ドリー)が独立して旋回できるので、長大な車体でも交差点やカーブでの取り回しができます

連結部分が伸縮や回転をするため、一般的なトレーラーよりも小回りが利きにくい側面はありますが、後部台車が独立して操舵できるもの(油圧式等)もあり、高い走行安定性を実現するようになっています。

積載物が車体構造の一部になる

積載物が前後車軸をつなぐ構造体として機能するため、荷重バランスの取り方が通常トレーラーと異なります。

荷台部分がなく、積載物で連結するため、荷台を持つトレーラーに比べて自重が軽い傾向にあります。

荷重分散の工夫

荷重を前後の車軸に分散させる設計となっており、道路への負担を軽減する設計になっています。

ポールトレーラーの用途

建設・インフラ・エネルギー分野などで、ポールトレーラーは、特殊な長尺資材を現場や工場まで安全に輸送するために用いられます。

ポールトレーラーの用途例

電力・通信分野では、送電線の建設現場への搬入として鉄塔材、電柱、ケーブルドラムなどが、橋梁・土木の分野では、橋梁架設・トンネル建設現場へ桁材、鋼管杭、H鋼を搬入したりします。

また、風力発電ではブレード(羽根)を発電所建設現場に運搬したり、鉄鋼・造船の分野でも鋼材、パイプ、シャフトを製鉄所や造船所へ搬送したります。鉄道関係として鉄道レールを運ぶこともあります。

ポールトレーラーの構造と寸法

ポールトレーラーは、構造は、トラクタ(けん引車)として前方で牽引力を発生させる車両。通常はトラクタヘッドが使用されています。

2つ目は、独立して旋回可能なドリー(後部台車)が積載物の後端を支える車軸付き台車としてあります。

最後にトラクタとドリーを連結する鋼製の伸縮シャフトとしてポール(連結棒)で油圧や機械的構造で長さを調整します。

寸法としては、全長は約15~30m以上になります。荷物により変動します。幅は道路運送車両法上の基準である2.5mです。高さは約3.5m以下となり、最大積載量は、20~40トン程度です。

長さと重量ともに通常の車両限度を超えるために特殊車両通行許可の対象となります。

ポールトレーラーと法律

ポールトレーラーは、道路運送車両法および道路法において特殊車両に分類されていますので、公道を走行するには次の手続きや許可が必要です。

特殊車両通行許可(道路法第47条の2)

国土交通省または自治体が発行する特車許可を取得しなければ走行できません。

  • 特殊車両通行許可申請時には次の仕様が必要になります。
    • 車両の寸法(全長・幅・高さ)
    • 重量(総重量・軸重)
    • 積載物の種類・寸法
    • 通行経路・橋梁条件

道路法からの引用です。

第四十七条
2 車両でその幅、重量、高さ、長さ又は最小回転半径が前項の政令で定める最高限度をこえるものは、道路を通行させてはならない。

車検・登録要件

ポールトレーラーは被けん引車として登録されて、牽引車とセットで使用されますので、連結検討書や制動装置の適合性も確認されます。

通行規制と誘導措置

全長が25mを超える場合は、警察署への通行届出や誘導車(先導車)の配置が義務付けられる場合があります。

ポールトレーラーの国内保有台数

国土交通省の統計や業界団体の資料によると、日本国内のポールトレーラー保有台数は少なく、数百台規模となっています。超長尺物のみの荷物で需要が限定的で車両価格も高価で操作に熟練したドライバーが必要なためだとされています。

主な保有事業者は、電力関連の輸送会社、橋梁メーカー、風力発電関連業者などに限られています。

ポールトレーラーの免許

ポールトレーラーを運転やけん引をするには、大型自動車免許およびけん引免許が必要です。

大型自動車免許はトラクタ(牽引車)の運転に必要となり、けん引免許はポールトレーラー(被けん引車)をけん引するために必要です。

また、現場では特殊車両通行許可の知識、荷役作業主任者・玉掛け技能講習修了者、経験豊富な誘導員との連携運行のような資格やスキルが必要となります。

ポールトレーラーは構造が特殊で、旋回時の車両挙動も独特なため、高度な操縦技術と現場対応力が必要とされます。

Q&A

まとめをかねてQ&Aをつくりました。参考にしてください。