2025年11月、名神高速道路の多賀サービスエリアで、法定制限値25トンの2.3倍にあたる58.2トンの大型トレーラーが無許可で走行していたとして、運転手と運送会社が道路法違反で刑事告発されました(NEXCO中日本・2026年3月公表)。同年には新潟県内の高速道路でも54.9トンの大型トレーラーが無許可走行として告発されています。
重量超過はルール違反だけではなく、橋梁や舗装を急速に劣化させてブレーキ性能の低下や横転リスクを高め、走行中に重大事故を引き起こす危険があります。
特殊車両の重量超過に関する法令の基礎・制限値・罰則・許可申請の方法・最新の取締り強化動向まで、運送事業者・ドライバー・荷主が知っておくべき情報を詳しく解説します。
「重量超過」とは、道路法と道路交通法の違い
車両の重量に関する規制は、主として2つの法律によって定められています。
道路交通法による「過積載」
道路交通法は、車検証(自動車検査証)に記載された最大積載量を超えて貨物を積載することを「過積載」として、禁止しています。積載量は車両ごとに異なり、この制限を超えると道路交通法違反となります。
道路法(車両制限令)による「重量制限超過」
道路法(第47条)と車両制限令(第3条)は、車両が道路を通行する際の総重量・軸重・輪荷重などの絶対的な上限値を定めています。この上限が「一般的制限値」です。車両の大きさや積載量にかかわらず、一般制限値を超える車両は原則として道路を通行させてはなりません。
一般的制限値とは、特別な許可がなくても通行できる上限値のことです。主な基準は次のとおりです。
| 項目 | 一般的制限値 |
|---|---|
| 幅 | 2.5m |
| 高さ | 3.8m |
| 長さ | 12m |
| 総重量 | 原則20t |
| 軸重 | 10t |
| 隣接軸重 | 18t~20t |
| 輪荷重 | 5t |
総重量については車軸数や指定道路かどうかにより異なります。詳しくは国交省のHPをご覧ください。
車検証上の最大積載量の範囲内であれば合法とは限りません。車両総重量が一般的制限値を超えれば、たとえ過積載でなくとも道路法違反となります。
道路法第47条第1項および車両制限令第3条により、道路を通行する車両の最高限度(一般的制限値)は以下のとおり定められています。
これらのいずれか一つでも超える車両は特殊な車両(特殊車両)として扱われ、道路の通行に特殊車両通行許可が必要です(道路法第47条の2)。
道路法からの引用です。
(限度超過車両の通行の許可等)
第四十七条の二 道路管理者は、車両の構造又は車両に積載する貨物が特殊であるためやむを得ないと認めるときは、前条第二項の規定又は同条第三項の規定による禁止若しくは制限にかかわらず、当該車両を通行させようとする者の申請に基づいて、通行経路、通行時間等について、道路の構造を保全し、又は交通の危険を防止するため必要な条件を付して、同条第一項の政令で定める最高限度又は同条第三項に規定する限度を超える車両(以下「限度超過車両」という。)の通行を許可することができる。
特殊車両とは道路法第47条の2では、一般的制限値を超える車両を「特殊車両」としています。
代表的なものとして、セミトレーラー・フルトレーラー・重機運搬車・大型クレーン車・重量物運搬車・建設機械運搬車などがあります。詳しくは国交省のHPをご覧ください。

トレーラーはなぜ重量超過になりやすいのか?
トレーラーは大量輸送を目的としているため、重量超過が発生しやすい車両です。特に、鉄骨・鋼材・建設機械・重機・プラント設備・コンテナ貨物などを運搬する場合は重量が非常に大きくなりますし、荷物自体は適法でも、積載方法・軸配置・荷重バランスによって軸重超過となるケースもあります。総重量だけでなく軸重管理も重要です。
近年、高速道路会社や警察による取締りが強化されています。報道によれば、車両総重量が大幅に超過したトレーラーについて、道路管理者が告発に踏み切った事例もあります。
重量超過は単なる運送会社の問題ではなく、道路インフラ全体の維持管理に影響するため、国や高速道路会社は厳しい姿勢で対応しています。
高速道路の特例値(重さ指定道路・高速自動車国道)
高速自動車国道および道路管理者が指定した「重さ指定道路」では、車両の長さと軸距に応じて、総重量の制限値が引き上げられています。
| 最遠軸距 | 総重量の制限値 |
|---|---|
| 5.5メートル未満 | 20トン |
| 5.5メートル以上7メートル未満(車長9m以上) | 22トン |
| 7メートル以上(車長11m以上) | 25トン |
さらに、バン型・タンク型・幌枠型・コンテナ用・自動車の輸送用のセミトレーラー連結車・フルトレーラー連結車(特例8車種)には追加の特例があり、高速自動車国道では最大36トン、その他の道路でも最大27トンまで認められるケースがあります。
ただし、これらの特例は「制限値の上限が引き上げられる」にすぎません。上限を超えれば引き続き特殊車両通行許可が必要です。
重量超過の危険性、道路・橋梁への影響
道路インフラへのダメージ
重量超過車両の通行は、橋や舗装に疲労(ダメージ)を与え、その影響は舗装で4乗、橋(コンクリート床版)で12乗になると言われています。
国土交通省の試算によると、「全交通の0.3%の過積載の大型車両が、道路橋の劣化に与える影響の約9割を引き起こしている」とされています。
軸重20トン車1台の走行が橋梁の床版に与える影響は、一般的制限値である軸重10トン車約4,000台の走行に相当するとも指摘されています。つまり、重量超過の大型トレーラー1台が通行するだけで、数千台分もの劣化が橋梁に生じます。
交通安全のリスク
重量超過車両は速度低下・操作性低下に加え、ブレーキ性能の著しい低下となります。制動距離の延長や横転リスクの増大は、重大事故に直結します。重量超過車両等が事故を起こした場合、事故の処理には散乱した大量の積荷や車両の撤去作業に長時間の規制を余儀なくされ、社会・経済活動に大きな影響を与えます。
重量超過に対する罰則(道路法・道路交通法)
道路法による罰則
違反内容に応じて、以下の罰則が定められています。
100万円以下の罰金
許可を受けないで特殊な車両を通行させた者(道路法第104条第1号)
100万円以下の罰金
特殊な車両を通行させるとき、許可証を備え付けていなかった者(道路法第104条第2号)
50万円以下の罰金
道路管理者から通行の中止・総重量の軽減・徐行等の命令を受けながら、それに違反した者(道路法第105条)
両罰規定
法人の代表または法人・人の代理人・使用人等の従業者が違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人または人に対しても罰金刑を科する(道路法第107条)運転手だけでなく、運送会社・法人も罰則の対象となります。
道路交通法による罰則(過積載)
道路交通法上の過積載(車検証記載の最大積載量超過)については、最大積載量の2倍以上の場合は「悪質違反」として即時告発の対象となり、運転者だけでなく事業者・荷主にも指導・措置命令が課せられます。
措置命令
道路管理者は、重量超過車両に対して次の措置を命じることができます(道路法第47条の4)。通行の中止命令・積荷の減載命令・徐行命令
特殊車両通行許可申請
一定の大きさや重さを超える車両(特殊車両)の通行には、あらかじめ道路管理者の許可が必要となります。申請を受けた道路管理者が審査を行い、車両の構造または積載する貨物が特殊であるためやむを得ないと認めたときに限り、必要に応じて条件を付したうえで「特殊車両通行許可」が下ります。
許可申請の流れ
1.申請先の確認
通行する道路の道路管理者(国道は国土交通省、都道府県道は都道府県、市区町村道は市区町村)
2.必要書類の準備
車両の諸元表・通行経路図・積載物の概要など
3.申請
オンライン(特殊車両通行許可オンライン申請システム)または窓口で申請
4.審査・許可
通常数日?数ヶ月(通行許可制度の場合)
5.許可証の携帯
通行中は必ず許可証を携帯し、道路管理者・警察の求めに応じて提示すること
通行条件(A~D条件)
許可証には、通行条件がA~Dで付与されます。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| A条件 | 特に条件なし(夜間通行不要・誘導車不要) |
| B条件 | 夜間通行(21時?翌6時)が必要 |
| C条件 | 誘導車の配置が必要 |
| D条件 | 超重量車両で個別審査・特別な条件が付加 |
特殊車両通行確認制度
令和4年4月1日からこの「特殊車両通行確認制度」の運用が始まりました。
改正後の道路法により、寸法・重量等に係る一定の限度を超える車両(限度超過車両)を通行させようとする者が、あらかじめ国の登録を受けた車両について、通行が可能な経路をオンラインで即時に確認し、通行できる制度が新たに創設されました。
旧制度(許可制度)との違い
| 項目 | 旧制度(許可制度) | 新制度(確認制度) |
|---|---|---|
| 回答速度 | 数日?数ヶ月 | 即時 |
| 車両登録 | 申請ごとに情報入力 | 事前登録(5年間有効)・登録料5,000円/台 |
| 経路指定 | 1申請につき1経路 | 出発地・目的地を入力すれば通行可能経路を一括表示 |
| ETC2.0 | 不要 | 必須(車両への搭載が必要) |
新制度ではETC2.0装置を搭載することが前提であり、これにより走行経路・速度などのデータが道路管理者に共有され、違反の自動検知にも活用されています。
新旧の制度は併存しており、どちらかを選んで申請することができます。ただし、確認制度を利用するには車両の事前登録が必要です。
荷主にも及ぶ責任(荷主勧告制度)
違反は、運転手と運送会社だけの問題だけではありません。荷主にも責任が及びます。
荷主勧告を受ける恐れのある行為の例として、「重量違反となるような配送依頼をする」ことが挙げられます。荷主が重量オーバーになることをわかっていて運送会社に配送依頼をするといったケースです。勧告を受けた場合、荷主名と事案の概要が公表されるという罰則があります。公表されれば、運送会社や取引会社にとどまらず、社会からの信頼が低下し、事業継続に影が差します。
また、国土交通省は過積載が判明した場合、荷主への勧告を行い、荷主名を公表できます(道路交通法第58条の5)。荷主として「知らなかった」では済まされないケースが増えており、サプライチェーン全体でのコンプライアンス管理が求められています。
取締り強化
刑事告発の事例
高速道路各社と日本高速道路保有・債務返済機構(JEHDRA)による刑事告発が相次いでいます。
2025年11月(告発は2026年3月)
名神高速道路 多賀SA(下り)において、車両総重量の一般的制限値25tを大きく超過する58tの大型トレーラーを無許可状態で通行させていたとして、「極めて悪質な違反」として刑事告発。運転手を道路法第104条第1号、運行会社を同法第107条に該当するとして滋賀県警察本部交通部高速道路交通警察隊に告発。
2024年
NEXCO東日本管内で、車両制限令に定められた車両総重量の一般制限値25トンを大きく超過する54.9トンの大型トレーラーを無許可状態で通行させたほか、軸重・車幅も一般的制限値を超えていたとして告発。
大口・多頻度割引の停止措置
高速道路の6会社では、重量超過等の違反が後を絶たず、道路を著しく劣化させる要因となっていることを踏まえて、平成29年4月1日より車両制限令違反者に対する割引停止措置等の実施内容を見直しています。累積違反点数150点以降も、30点ごとに一部利用停止期間が1か月ずつ延長されます。
これにより、繰り返し違反を行う事業者はETCカードの大口・多頻度割引が停止され、経済的損失を受けることになります。
自動軸重計による24時間監視
令和5年4月からは、JEHDRAが自動軸重計を利用した指導取締りを本格的に運用を開始しています。高速道路上での重量違反をリアルタイムで検知するシステムが導入されており、「見つからなければよい」という意識は通用しなくなっています。
また、ETC2.0データを活用した走行車両計測システムにより、24時間自動的に違反車両の監視が行われています。
重量超過を防ぐために事業者がとるべき対策
出発前の重量確認
積載前・積載後の計量を徹底し、一般的制限値または取得している通行許可の条件値を超えていないかを確認します。
特殊車両通行許可・確認制度の適切な活用
制限値を超える見込みがある場合は、事前に許可申請または確認制度を利用してください。オンライン申請は24時間対応しており、特殊車両通行確認制度では即時に回答が得られます。
軸重超過に注意
「軸重」とはそれぞれの車軸にかかる重量のことで、車両の総重量が制限内でも、軸重が制限を超えてしまうと違反になります。積み方が偏っていると軸重違反になることがありますので、横転事故を防ぐためにも出発前に確認しましょう。
荷主との連携
荷主から無理な積載依頼があった場合は、法令に基づいて断ることが必要です。荷主も違法行為に加担した場合は勧告・公表の対象となります。
ドライバー教育と社内コンプライアンス体制の整備
重量制限の理解・遵守を徹底する研修を定期的に実施するとともに、違反が発生した場合の報告ルートを明確化します。
参照資料・出典元
道路法(昭和27年法律第180号)第47条、第47条の2、第47条の4、第104条、第105条、第107条
車両制限令(昭和36年政令第265号)第2条、第3条
国土交通省 関東地方整備局「道路法に基づく車両の制限とは
国土交通省 関東地方整備局「特殊車両通行許可制度について
国土交通省「限度超過車両の新たな通行確認制度の運用が始まります!」(令和4年3月 報道発表資料)
国土交通省「特殊車両の通行に係る誘導等ガイドライン」(令和2年12月)
NEXCO中日本「道路法第47条第2項違反者(重量超過車両)の告発について」(2026年3月18日)
NEXCO東日本「車両制限令を守りましょう」
NEXCO西日本「大型・特殊車両や危険物積載車両を運転される方々へ」
独立行政法人 日本高速道路保有・債務返済機構「高速道路における一般的制限値」
JB本四高速「車両制限令を守りましょう!」
特殊車両通行許可オンライン申請システム




