特車通行許可申請で質問の多いのが「隣接軸重」です。特車許可の制限値で判断のむずかしいポイントだと思います。「軸重は分かるけれど、隣接軸重との違いが分からない」「隣接とは何メートル以内なのか」「2軸台車やトレーラではどう考えるのか」などです。
特殊車両通行許可では、単純に車両総重量だけではなく、「各軸にどれだけ重量がかかるか」が重要になっています。これは、たとえば橋梁への影響は軸の配置によって大きく変わるため、「隣接軸重」という考え方が設けられています。
国土交通省・全日本トラック協会・車両制限令などをもとに、特殊車両通行許可における隣接軸重について、実務的に分かりやすく解説します。
隣接軸重とは?
隣接軸重とは、文字どおり「隣り合う軸にかかる重量」のことです。
通常の「軸重」は、1本の車軸にどれだけ重量がかかっているかを示しますが、隣接軸重は「近接した複数の軸に、合計でどれだけ荷重がかかっているか」を見る基準になっています。近接した複数の軸をセットで判断することになります。
これは特に橋梁保護の観点で重要になっています。例えば、1軸ごとの重量が制限内であっても、重い軸が短い間隔で連続して配置されると、橋に大きな負荷が集中してしまいます。そのため、特殊車両通行許可では、単独の軸重だけでなく、「隣接する軸の合計重量」も規制されています。
「隣接」とは具体的に何メートル以内?
質問でもよくあるとおり、ここが最も誤解されやすいポイントです。特殊車両通行許可における「隣接軸」とは、一般的には「軸距が1.8メートル未満の軸」を指しています。
前後の軸の中心間距離が1.8メートル未満の場合であれば、その軸同士は「隣接軸」として扱われます。逆に、軸間距離が1.8メートル以上あれば、原則として独立した軸として扱われます。この「1.8メートル」という基準は、車両制限令別表に基づく重要な基準になっています。
トレーラや重機運搬車などで「見た目は離れているように見えていても、法令上は隣接扱いになる」というケースもあるため注意が必要です。

軸重と隣接軸重の違い
間違いやすいので整理しておきます。
軸重
1本の車軸にかかる重量です。一般的制限値では、軸重は「10トン以下」とされています。
例えば、後輪2軸車で、第1軸:6トンで第2軸:9トンであれば、軸重としてはどちらも制限内です。
隣接軸重
近接する複数軸の合計重量です。
例えば、第1軸:9トンで第2軸:9トン、軸距:1.3mの場合、各軸は10トン以下でも、隣接軸重は18トンとなります。このように、単独軸では適法であっても、隣接軸重で制限超過になる場合があります。
隣接軸重の制限値
車両制限令では、隣接軸重について次のような基準が定められています。
一般的な制限値
隣接軸距が1.8m未満の場合、隣接軸重:18トン以下とされています。しかし、軸距や車両構造によっては緩和規定が適用される場合もあります。
例えば、一定条件を満たす車両では、19トン、20トンなどの特例が認められるケースがあります。
これは、車両のサスペンション構造や道路への荷重分散性能などが考慮されているためです。
軸距1.8m未満(原則)→ 18トン以下
軸距1.3m以上1.8m未満かつ各軸重9.5トン以下 → 19トン以下
軸距1.8m以上 → 20トン以下
車両制限令からの引用です。
(車両の幅等の最高限度)
第三条 法第四十七条第一項の車両の幅、重量、高さ、長さ及び最小回転半径の最高限度は、次のとおりとする。
一 幅 二・五メートル
二 重量 次に掲げる値
イ 総重量 高速自動車国道又は道路管理者が道路の構造の保全及び交通の危険の防止上支障がないと認めて指定した道路を通行する車両にあつては二十五トン以下で車両の長さ及び軸距に応じて当該車両の通行により道路に生ずる応力を勘案して国土交通省令で定める値、その他の道路を通行する車両にあつては二十トン
ロ 軸重 十トン
ハ 隣り合う車軸に係る軸重の合計 隣り合う車軸に係る軸距が一・八メートル未満である場合にあつては十八トン(隣り合う車軸に係る軸距が一・三メートル以上であり、かつ、当該隣り合う車軸に係る軸重がいずれも九・五トン以下である場合にあつては、十九トン)、一・八メートル以上である場合にあつては二十トン
ニ 輪荷重 五トン
まとめのイラストです。

なぜ隣接軸重が重要なのか
道路や橋梁は、単純な「総重量」だけで傷むわけではありません。特に橋梁では、「どこに」「どの程度集中して荷重がかかるか」が極めて重要です。
例えば同じ20トンであっても、20トンが広く分散されている場合と20トンが狭い範囲に集中している場合では、橋へのダメージが大きく異なります。
そのため、特殊車両通行許可では、総重量・軸重・隣接軸重・輪荷重などを総合的に確認・規制しています。
日本の道路は道路構造令に基づいて設計されており、橋梁や路面はこの一般的制限値の範囲内の車両が通行することを前提に強度が計算されています。隣接軸重の制限は、こうした道路・橋梁の構造保全を目的としたものです。
トレーラで隣接軸重が問題になりやすい理由
隣接軸重が問題になりやすいのはセミトレーラや重トレーラです。特に、後軸2軸・3軸部分では、軸間距離が短いため、隣接軸として扱われることが多くなります。
例えば3軸トレーラでは、各軸は制限内であっても3軸全体で荷重集中というケースがよくあります。また、積荷位置が少し変わるだけで軸重配分が変化するため、荷締め位置・重機の積載位置・コンテナ位置によって隣接軸重超過になることもあります。
このため、特殊車両通行許可では、単純に「総重量が適法だから大丈夫」とはなりません。
隣接軸重を超えるとどうなる?
隣接軸重が一般的制限値を超える場合、その車両は「特殊車両」に該当する可能性があります。その結果、特殊車両通行許可が必要になって、経路制限・徐行条件・時間指定・誘導車条件などが付される場合があります。無許可通行や制限超過は道路法違反となって、取締り対象にもなります。
最近は大型車両の取締り強化が進んでおり、悪質な重量超過では是正指導や告発が行われるケースもあります。
間違いやすいケースや注意点
「総重量だけ見ればよい」は誤り
もっとも多い誤解です。例えば総重量が基準内であっても、軸重超過・隣接軸重超過で特殊車両扱いになることがあります。
また、たとえば、大型車の後2軸でよくある誤解として、各軸10トン以下だから2軸合計20トンまで積めると思われがちですが、軸距が1.8m未満であれば隣接軸重の上限は原則18トン(条件付きで19トン)になります。「軸重10t×2軸=20t」という計算で申請データを作ると、申請システムで「隣接軸重超過」のエラーが返されることになります。
「2軸だから18トン固定」ではない
車両構造や軸距によっては特例があります。新規格車や特例8車種では、一般車両と異なる計算になる場合もあります。
また、「見た目の距離」ではなく軸中心間距離が重要です。車検証の「軸距」欄(またはメーカー提供の車両諸元表)で、隣接する各軸間の距離を確認してください。どの区分に該当するかによって、申請できる積載重量が変わります。
隣接判定は、タイヤの端から端ではなく、「軸中心間距離」で判断します。車検証情報や諸元表で確認することが重要です。車検証の「軸距」欄に記載されています。複数の軸がある場合は、第1軸~第2軸、第2軸~第3軸といった複数の軸距が記載されます。諸元表(カタログや車両メーカーの仕様書)でも確認できます。
単純に「大きさサイス」や「重さ」だけではない
特殊車両通行許可では「軸配置」が重要です。特殊車両通行許可では、単純な大きさだけでなく、軸数・軸配置・軸距・荷重分散が重要です。特に橋梁審査では、隣接軸重が大きな判断要素になります。
そのため、車検証・車両諸元表・軸配置図・積載状態を正確に確認したうえで申請する必要があります。重機運搬や鋼材輸送などでは、積載方法次第で許可条件が変わることも少なくありません。
積載物の重心・バランスに注意
バラ積み貨物(砂・砕石・農産物など)や液体タンクは、積み方によって各軸への荷重配分が変わります。荷台の後方に重量が偏ると後軸の軸重・隣接軸重が超過しやすくなります。
特に特例8車種(バン型・タンク型・幌枠型・コンテナ用・自動車運搬用・あおり型・スタンション型・船底型のセミトレーラ、およびポールトレーラ)でバラ積み貨物を積む場合、保安基準緩和を受けている車両でも隣接軸重が19tを超えないよう注意が必要です。
まとめ
隣接軸重とは、「近接した複数軸にかかる合計重量」のことです。隣り合う2本の車軸にかかる軸重の合計値のことで、車両制限令第3条ハに定められています。
特殊車両通行許可では、単なる総重量だけでなく、橋梁保護の観点から隣接軸重が重要視されています。
特に、軸距1.8m未満、トレーラ車両、重機運搬、高重量輸送では注意が必要です。
特殊車両通行許可の申請では、軸重・隣接軸重・軸距を正確に確認したうえですすめることが重要です。隣接軸重は、総重量や単軸の軸重とは別に独立して審査される基準です。この点を見落とすと、申請エラーや許可後の違反につながる可能性があります。不明な点がある場合は、特殊車両通行許可専門の行政書士法人アラインパートナーズにご相談ください。
参考資料
この記事は下記資料を参考にして作成しました。
国土交通省「道路:特殊車両通行制度について」
国土交通省 関東地方整備局「一般的制限値」
国土交通省 関東地方整備局「道路法に基づく車両の制限とは」
国土交通省 関東地方整備局「重さ指定道路・高さ指定道路とは」
公益社団法人 全日本トラック協会「特殊車両が道路を走行するために必要な知識
内閣府 規制改革推進室「道路通行車両の制限」



