運送会社や建設業者のなかには、当社のトラックは大丈夫だろうか?、もし違反と言われたらどうなるのか?などと不安を感じている方も少なくないと思います。道路を通行する車両には、道路法および車両制限令によって幅・高さ・長さ・重量などの「一般的制限値」が定められてますので、これを超えた状態で特殊車両通行許可が無許可で走行すると車両制限令違反となります。
車両制限令に違反した車両は、単なる交通違反ではなく、道路や橋梁の損傷、重大事故、物流全体への影響につながるため、国土交通省は厳格な監視・取締りを実施しています。特に近年は、重量自動計測装置や指導取締基地による監視も強化されています。
違反した場合、運転者だけでなく事業主体である法人にも最大100万円の罰金が科せられるほか、高速道路の大口・多頻度割引の停止や利用停止、社名の公表といった実務上の深刻な影響を受けることがあります。
特殊車両通行許可専門の行政書士法人アラインパートナーズが、車両制限令違反の仕組み・一般的制限値の内容・取り締まりの実態・罰則の種類について、道路法・車両制限令・国土交通省の公表資料をもとに詳しく解説します。
車両制限令とは
車両制限令(昭和36年政令第265号)とは、道路の構造を保全し、または交通の危険を防止するため、道路を通行する車両の大きさや重さの最高限度(一般的制限値)を定めた政令です(道路法第47条第1項の委任に基づく)。
道路は一定の構造基準に基づいて設計・建設されています。そのため、規格を超える大型車両が無制限に走行すると、舗装の損傷、橋梁への過大な負荷、さらには重大事故の原因となります。
- 道路は一定の設計条件で造られており、その想定を超える車両が走行すると、次のような問題が発生します。
- 橋梁の疲労・損傷
- 路面のわだち掘れ
- ガードレール・標識等の破損
- 交通事故リスクの増加
これを防止するために、車両の幅・高さ・長さ・重量・最小回転半径について最高限度が定められています。
この最高限度を超える車両を「特殊な車両」(特殊車両)といい、原則として道路管理者の特殊車両通行許可、または特殊車両通行確認を受けた上で通行しなければなりません。
特殊車両通行確認制度は、一定の大きさや重さを超える「特殊車両」が、指定された道路をオンラインで即時に通行確認し、最短当日(即時)に走行できるようになる制度です。
| 法令名 | 根拠 |
|---|---|
| 道路法(昭和27年法律第180号) | 第47条(車両の通行制限)、第47条の2(特殊車両通行許可)、第47条の14(措置命令)、第104条・第107条(罰則) |
| 車両制限令(昭和36年政令第265号) | 第2条(定義)、第3条(一般的制限値) |
道路法からの引用です。
第四十七条 道路の構造を保全し、又は交通の危険を防止するため、道路との関係において必要とされる車両(人が乗車し、又は貨物が積載されている場合にあつてはその状態におけるものをいい、他の車両を牽けん引している場合にあつては当該牽けん引されている車両を含む。以下本節及び第八章中同じ。)の幅、重量、高さ、長さ及び最小回転半径の最高限度は、政令で定める。
2 車両でその幅、重量、高さ、長さ又は最小回転半径が前項の政令で定める最高限度をこえるものは、道路を通行させてはならない。
3 道路管理者は、道路の構造を保全し、又は交通の危険を防止するため必要があると認めるときは、トンネル、橋、高架の道路その他これらに類する構造の道路について、車両でその重量又は高さが構造計算その他の計算又は試験によつて安全であると認められる限度をこえるものの通行を禁止し、又は制限することができる。
4 前三項に規定するもののほか、道路の構造を保全し、又は交通の危険を防止するため、道路との関係において必要とされる車両についての制限に関する基準は、政令で定める。
車両制限令からの引用です。
(車両の幅等の最高限度)
第三条 法第四十七条第一項の車両の幅、重量、高さ、長さ及び最小回転半径の最高限度は、次のとおりとする。
一 幅 二・五メートル
二 重量 次に掲げる値
イ 総重量 高速自動車国道又は道路管理者が道路の構造の保全及び交通の危険の防止上支障がないと認めて指定した道路を通行する車両にあつては二十五トン以下で車両の長さ及び軸距に応じて当該車両の通行により道路に生ずる応力を勘案して国土交通省令で定める値、その他の道路を通行する車両にあつては二十トン
ロ 軸重 十トン
ハ 隣り合う車軸に係る軸重の合計 隣り合う車軸に係る軸距が一・八メートル未満である場合にあつては十八トン(隣り合う車軸に係る軸距が一・三メートル以上であり、かつ、当該隣り合う車軸に係る軸重がいずれも九・五トン以下である場合にあつては、十九トン)、一・八メートル以上である場合にあつては二十トン
ニ 輪荷重 五トン
三 高さ 道路管理者が道路の構造の保全及び交通の危険の防止上支障がないと認めて指定した道路を通行する車両にあつては四・一メートル、その他の道路を通行する車両にあつては三・八メートル
四 長さ 十二メートル
五 最小回転半径 車両の最外側のわだちについて十二メートル
特殊車両通行許可
特殊車両通行許可とは、一般的制限値を超える車両について、道路管理者が個別審査し、条件付きで通行を認める制度です。道路法第47条の2に基づき運用されています。
- 特殊車両通行許可の対象例は次のとおりです。
- 建設機械運搬車
- 重量物運搬車
- 大型トレーラー
- 海上コンテナ車
- 長尺物輸送車両
- 特殊車両通行許可では次のような条件が付されることがあります。
- 通行経路指定
- 夜間限定
- 徐行義務
- 誘導車配置
- 時間帯制限
条件違反も車両制限令違反になります。
一般的制限値
一般的制限値は、道路法第47条第1項および車両制限令第3条に定められています。以下に一覧を示します。
基本的な一般的制限値(車両制限令第3条)
| 項目 | 制限値 |
|---|---|
| 幅 | 2.5m以下 |
| 高さ | 3.8m以下 |
| 長さ | 12m以下 |
| 最小回転半径 | 12m以下(車両の最外側) |
| 総重量 | 20t以下 |
| 軸重 | 10t以下 |
| 隣接軸重 | 隣り合う車軸の軸距が1.8m未満の場合:18t以下、1.8m以上の場合:20t以下 |
| 輪荷重 | 5t以下 |
出典:車両制限令第3条、国土交通省関東地方整備局「一般的制限値」

ここでいう「車両」とは、人が乗車し、または、貨物が積載されている場合にはその状態のものをいい、他の車両をけん引している場合にはけん引されている車両を含みます(車両制限令第2条)。
一般的制限値の特例
すべての道路・車両に同一の制限値が適用されるわけではありません。道路の種別や車両の区分によって、以下のような特例が認められています。
高さの特例(高さ指定道路)
国土交通大臣が指定する「高さ指定道路」では、高さの制限値が4.1m以下に緩和されます。
重量の特例(重さ指定道路)
- 国土交通大臣が指定する「重さ指定道路」では、総重量について以下のとおり特例が適用されます。
- 単車(車軸数による)は、最大25tまで(道路の状況等による)
- セミトレーラ連結車は、総重量36t(車軸数・軸距によっては最大40tまで)、長さ18m
- フルトレーラ連結車は、総重量36t(同条件では最大44tまで)、長さ21m
新規格車
平成6年(1994年)の法改正で導入された新規格車は、一般的制限値よりも大きな制限値が設けられており、重さ指定道路・高さ指定道路を通行する場合には、所定の要件を満たす場合、特殊車両通行許可が不要になります。ただし、重さ指定道路以外の道路を通行する場合には許可が必要になります。

違反となる主な事例
次のいずれかに該当する場合は、車両制限令違反(道路法違反)となります。
無許可通行
最も多い違反です。一般的制限値(または指定道路の特例値)を超える車両が、特殊車両通行許可も特殊車両通行確認も取得せずに道路を通行した場合(道路法第47条第2項違反)。
許可条件違反
特殊車両通行許可を取得していても、以下の許可条件に違反した通行も「違反」となります。
・B条件違反:徐行が必要な場所で徐行しなかった場合
・C条件違反:誘導車を配置すべき場所で配置しなかった場合
・経路外通行:許可された経路と異なる経路を通行した場合(無許可通行と同様に扱われる)
特殊車両(特車)の通行許可において、「ABC」は通行条件(A・B・C・D)の一部を指します。橋や道路の耐荷重、道幅などの条件に応じて付与される安全対策のレベルで、アルファベット順に徐行や誘導車の配置などの制限が厳しくなります
・A条件:特別な条件は付されておらず、そのまま通行可能です。
・B条件:通行にあたり、徐行や連行禁止(2台以上の特車が同時に同じ橋や高架を渡らないこと)などの一般的な遵守事項が求められます。
・C条件:カーブや交差点での安全を確保するため、徐行および前方誘導車の手配が必須となります。
許可証不携帯
特殊車両通行許可証(許可証一式:許可証・条件書・車両内訳書・経路図・経路表)を車両に備え付けていない場合(道路法第47条の2第6項違反)。
措置命令違反
道路管理者または道路監理員から通行中止・積荷軽減などの措置命令を受けたにもかかわらず、これに従わずに通行を継続した場合です。
取り締まりの方法と体制
国土交通省(各地方整備局・事務所)および高速道路会社・独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構(JEHDRA)が連携して、以下の方法で取り締まりを実施しています。
指導取締基地(台貫所)
道路管理者が沿道その他適切な場所に、重量計その他の車両計測機器を備えた「指導取締基地」を設置し、通行する車両の重量・寸法を測定します。法令違反が認められる車両に対しては、指導・措置命令を行います。
車両重量自動計測装置
直轄国道(全国39か所)や高速道路に設置された車両重量自動計測装置(WIM:Weigh In Motion)により、走行中の車両の軸重を自動的に計測します。計測データは許可情報と照合され、違反が自動的に検出されます。
高速道路においては、インターチェンジや本線料金所等に設置された自動軸重計で計測が行われており、JEHDRAが発行した措置命令の件数は年間1,000件を超えています(JEHDRA公表資料)。
可搬式重量計測装置
可搬式の重量計測装置を用いて、定期的・機動的な取り締まりも実施されています。特定の路線や時期に集中した重点取り締まりが行われることもあります。
ETC車線での取り締まり
高速道路では、入口のETC車線において法令違反車両等の取り締まりが行われることがあります。この際はETC搭載車両も一旦停止を求められる場合があります。
悪質違反者への対応
・措置命令4回または是正指導5回に達した場合:告発を実施
・制限値の2倍以上の重量超過など悪質な違反:現地取締りで確認した場合に即時告発
・報告徴収・立入検査(道路法に基づく)の拒否:告発対象
・繰り返し違反した事業者名:国土交通省のホームページへの公表
違反に対する行政上の措置
取り締まりで違反が確認された場合、段階に応じて次の行政措置が取られます。
高速道路における違反点数と措置
高速道路会社・JEHDRAの取り締まりでは、違反の程度に応じて「指導警告」「措置命令」が行われ、違反内容に応じた違反点数が付与されます。最大2年間の累積点数に応じて、以下の措置が講じられます。
| 累積点数 | 措置内容 |
|---|---|
| 初期段階 | 指導・警告 |
| 一定の累積 | 大口・多頻度割引の割引停止 |
| さらなる累積 | 高速道路の利用停止 |
| 悪質違反 | 点数累積にかかわらず一部割引停止・告発 |
なお、聞くところによると、この高速道路の「大口・多頻度割引」の停止が影響が大きいようです。
高速道路会社(NEXCOなど)では、車両制限令違反の回数や重さに応じた「違反点数」を事業者に科しています。累積点数が一定基準を超えると、運送会社にとって死活問題となる「ETCコーポレートカードの利用停止」や「大口・多頻度割引の適用停止」といった大打撃を受けることになります。累積期間は「2年間」と長く、1社のなかの一台の違反が会社全体の割引停止に繋がります。
通行中止・積荷軽減命令
- 道路管理者(またはJEHDRA)は、違反と認められる車両に対し以下を命じることができます。
- 高速道路からの退出(退出命令)
- 積荷の軽減
- 特殊車両通行許可を取得するまでの通行中止
罰則(刑事罰)の種類と適用条文
道路法は、違反内容に応じて以下の刑事罰を定めています。
- 100万円以下の罰金(道路法第104条第1項)では以下のいずれかに該当する者
- 道路法第47条第2項(無許可通行)に違反した者、または特殊車両通行許可条件に違反して車両を通行させた者
- 許可証を車両に備え付けなかった者(道路法第47条の2第6項違反)
- 50万円以下の罰金(道路法第103条)
- 通行中の車両に対する道路管理者の通行中止・軽減命令(道路法第47条の4第1項等に基づく措置命令)に違反した者
- 30万円以下の罰金(道路法第101条第4号・第5号)
- 通行禁止・制限が行われている区間に違反して通行した者
- 道路管理者・道路監理員の停止命令に違反した者
両罰規定(道路法第107条)
両罰規定とは、法人の代表者や従業員などが、業務に関連して法令違反を行った際に、実際に違反行為をした本人だけでなく、所属する法人(会社など)や事業主にも罰金刑などを科す規定のことです。
法人の代表者、または法人・個人の代理人・使用人・従業者が違反行為をした場合、行為者を罰するほか、その法人または個人に対しても同額の罰金が科せられます。
つまり、運転者(従業員)が違反した場合でも、事業会社(法人)も同様に最大100万円の罰金を受ける可能性があります。
| 違反内容 | 罰則 | 適用条文 |
|---|---|---|
| 無許可通行・許可条件違反 | 100万円以下の罰金 | 道路法第104条第1項第1号 |
| 許可証不携帯 | 100万円以下の罰金 | 道路法第104条第1項第2号 |
| 措置命令違反 | 50万円以下の罰金 | 道路法第103条 |
| 通行禁止区間での違反通行 | 30万円以下の罰金 | 道路法第101条 |
| 法人への両罰 | 各条の罰金刑 | 道路法第107条 |
荷主勧告制度
車両制限令違反の背景には、荷主から過積載を強いられているケースも少なくありません。このため、道路法上の「荷主勧告制度」も設けられています。
荷主勧告制度とは、トラック運送業者の法令違反(過積載や過労運転など)の原因が荷主の不当な指示や要求にあると認められる場合、国土交通大臣がその荷主に対して改善を勧告し、 企業名と事案の概要を公表する制度です。
特殊車両通行許可を受けずに通行した事業者への取り締まりにおいて、その違反が荷主の過積載要求など荷主側の関与によるものであることが判明した場合、国土交通大臣または都道府県知事が荷主に対して是正を勧告し、荷主名が公表されることがあります。
高速道路各社も、違反事業者名および荷主名の公表を行い抑止効果を高めています。
違反しないために特殊車両通行許可が必要な事例
一般的制限値を超える車両で道路を通行する場合は、必ず特殊車両通行許可(または特殊車両通行確認制度の利用)が必要です。代表的なケースを以下に整理します。
| 車両・状況 | 許可の要否 |
|---|---|
| 総重量が20tを超えるトラック・トレーラ | 原則必要(重さ指定道路では特例あり) |
| 幅が2.5mを超える車両 | 必要 |
| 高さが3.8mを超える車両(4.1m超は高さ指定道路も不可) | 必要 |
| 長さが12mを超える車両 | 必要 |
| 軸重が10tを超える場合 | 必要 |
| 許可経路以外の道路を通行する場合 | 改めて申請が必要 |
| 誘導車を配置しない場合(条件付き許可の場合) | 違反になる |
また、許可証は通行中必ず車内に備え付けておく必要があります。
参照法令・参考資料
法令
道路法(昭和27年法律第180号)第47条、第47条の2、第47条の4、第47条の10、第47条の14、第101条、第103条、第104条、第107条
車両制限令(昭和36年政令第265号)第2条、第3条
国土交通省・関係機関
国土交通省「特殊車両通行制度について」
https://www.mlit.go.jp/road/tokusya/
国土交通省関東地方整備局「道路法に基づく車両の制限とは」
https://www.ktr.mlit.go.jp/road/sinsei/road_sinsei00000007.html
国土交通省関東地方整備局「一般的制限値」
https://www.ktr.mlit.go.jp/road/sinsei/road_sinsei00000008.html
国土交通省関東地方整備局「車両の制限に関する法令」
https://www.ktr.mlit.go.jp/road/sinsei/road_sinsei00000010.html
独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構「車両制限令違反車両に対する取組」
https://www.jehdra.go.jp/torikumi/sharyouseigenrei.html
NEXCO西日本「車両制限令を守りましょう!」
https://www.w-nexco.co.jp/safety_drive/specialcars/
全日本トラック協会「特殊車両が道路を走行するために必要な知識」
https://jta.or.jp/wp-content/themes/jta_theme/pdf/anzen/oogata/tokushu_sharyo.pdf




